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2026.10.02

ホテル経営を現場から。AIが育てる数字力

宿泊施設の予算作成や利益の管理。これらは長年、経営層や一部の担当者だけがExcelと格闘する「ブラックボックス」だ。結果として、現場で汗を流すスタッフと本部との間には「数字」という共通言語が育たず、経営感覚を持った人材が育ちにくい構造的な課題があった。この分断を解消するため、AIを用いた直感的なシステムの提供を開始した。単なる業務効率化を超え、現場スタッフを経営のパートナーへと育て上げる実践的なアプローチに迫る。(文=AIBase編集部)

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AIとスライダーで直感的な予算作成

2026年8月、ホテル経営のコンサルティングなどを手掛ける株式会社nariizは、ホテル開発・運営に特化したAIエージェントシステム「JOINTPOOL AI」の提供を開始した。

(引用元:PR TIMES)

ホテル業界では、予算作成やPL(損益計算書)管理が一部の担当者に依存し、現場のスタッフが経営数字を実務の中で学ぶ機会が乏しいという課題があった。本部は数字で語り、現場は感覚で語るため、組織内に共通言語が生まれにくい状況が常態化していた。

(引用元:PR TIMES)

こうした課題に対し、本システムは予算作成や部門別のKPI管理、事業計画の作成から提案・承認フローまでを一つの環境に統合。最大の特徴は、現場スタッフでも直感的に扱えるインターフェースだ。AIが施設情報の初期設定をサポートし、ADR(平均客室単価)や稼働率、人件費といった主要なKPIを「スライダー」で動かしながら、予算や行動計画を組み立てることができる。数字の連動をリアルタイムで確認できるため、不慣れなスタッフでもAIの助言を受けながら数字の構造を理解していける。

現場のスタッフが作成した予算案は「提案」としてシステム上に保存され、経営者や支配人が確認・承認する。実績データを取り込んだ予実管理や、ホテル開発時の収支シミュレーションなどにも対応し、開発担当者の育成にも貢献する。

有料版は月額48,000円(税抜)から提供され、導入後のサポートを手厚くするため、年内は毎月5社限定で案内される。

効率化の先にある「経営感覚の民主化」

多くの企業が導入する業務支援システムは、作業時間の短縮やコスト削減といった「効率化」に焦点が当てられがちである。しかし、今回のAIエージェントが目指しているのは、効率化の先にある「組織全体の経営感覚の底上げ」だ。

これまで、予算や事業計画の作成は専門知識を要する「作る作業」自体に多大な労力がかかっていた。AIが情報収集や計算、レポート作成の大部分を代行することで、人間は「数字を見て、考えて、決める」という本質的な役割に集中できるようになる。さらにスライダーを動かすだけで利益構造の変化が可視化される仕組みは、経営数字を座学ではなく「実務の中で体感して学ぶ」実践的な教材として機能する。

現場のスタッフが自らの手で予算のシミュレーションを行い、改善策を本部に提案。経営陣はそれを承認し、日々のタスクへと落とし込む。この双方向のコミュニケーションが日常の業務フローに組み込まれることで、初めて現場と本部が同じ視点、同じ「数字」という共通言語で対話できるようになるのだ。

人材不足が深刻なホテル業界において、現場のスタッフを、自律的に数字を読んで動ける経営のパートナーへと引き上げるアプローチは、組織の強靭化に直結する。

ツールは導入して終わりではない。日常的なシステム操作を通じて社員が経営的な視座を獲得し、企業全体の生産性と収益力が自律的に向上していく。AIを「教育インフラ」として機能させるこの合理的な設計思想は、ホテル業界のみならず、属人化に悩むあらゆる産業にとって強力な解決策となるはずだ。

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