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2026.09.29

暗黙知をAIで言語化。書かない引き継ぎ

ベテラン社員が辞めた途端、現場が回らなくなる組織は少なくない。マニュアルを読んでも「なぜその判断をしたのか」が分からないからだ。経験に基づく「暗黙知」は、本人に記載を頼んでも言語化されにくい。この目には見えない知識を、対話を通じて自然に引き出し、組織の資産へと変換するアプローチが始まった。属人化という構造的なリスクを解消し、持続可能なチームを築き上げるための実践的な手法を読み解く。(文=AIBase編集部)

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AIが「なぜ?」と問いかけ、ベテランの思考を抽出

2026年9月、katalift株式会社は、対話型ナレッジ構造化エンジン「Chizel」の先行導入企業の募集を開始した。対象となるのは、少人数で業務を回しており、ベテランの判断基準が個人に残ったまま引き継ぎが進んでいない企業である。

(引用元:PR TIMES)

物流などの現場では、人手不足を背景に特定のベテランへ判断が集中する属人化が深刻な課題となっている。システム操作などの「手順」は触りながら覚えることができるが、引き継ぎが難しいのは「例外が起きたときに何を見て、どう判断するか」という基準だ。例えば「この商品は指定の温度帯を外すと再検品になるため、積み込みの順番を変える」といったノウハウは、ベテランにとって当たり前すぎるため、自発的に書き出してもらうことは難しい。

(引用元:PR TIMES)

この「知っているが説明できない暗黙知」を言語化するため、同システムは白紙のドキュメントを渡すのではなく、AIが対話を重ねて判断の理由を引き出す仕組みを採用した。記憶や判断を引き出すための認知心理学の面接手法を参考にしており、「なぜこの取引先だけ確認を増やすのか」といった問いを投げかけ、やり取り自体を記録として残していく。

(引用元:PR TIMES)

引き出された知見は、後任が読んで理解できる形式に整理されるだけでなく、AIエージェントが扱えるデータ形式にも変換される。Claudeなどの外部AIツールから蓄積した判断基準を参照できるため、特定のサービスに知識を閉じ込めることなく、自社の資産として持ち出せる点も実務的だ。

現場定着の鍵はマニュアルを「書く」作業からの脱却

社内のノウハウを共有するためにマニュアルの整備を急ぐ企業は多いが、その多くが失敗に終わっている。「忙しいから」と記録が後回しにされ、実態とずれた手順書は誰にも読まれなくなる。そして記録がないために、また一人のベテランに問い合わせが集中し、属人化の鎖はより強固になっていく。

kataliftの代表取締役 小林 孝嗣 氏は、これまで数十社に伴走する中で「文書を書けず、残せないまま進んでしまう」現場のリアルを痛感してきたという。文書が残っていたとしても、手順書を渡して終わりにするのは、書籍を一冊渡すのと変わらない。なぜそうするのかという「理由」が抜け落ちたまま、表面的なやり方だけが引き継がれていく状態では、受け取る側の力量次第で業務の成否が分かれてしまう。

(引用元:PR TIMES)

この悪循環を断ち切るために必要なのは、担当者に「マニュアルを書かせる時間」を強制することではない。日常の対話や業務の延長線上で、自然と知識が構造化されていく仕組みだ。AIが聞き手となって「なぜ?」を深掘りすることで、人間はただ会話に応じるだけで自らの思考プロセスを言語化できる。

さらに、抽出された判断基準をAIが参照できる設計は、業務効率化のフェーズを一段階引き上げる。新人が迷ったとき、ベテランに電話をかける代わりにAIに問いかければ、過去の対話から導き出された「ベテランの思考回路」に即座にアクセスできるからだ。

個人の頭の中に眠る暗黙知は、言語化されて初めて企業の資産になる。対話型のシステムが普及すれば、担当者が去った瞬間に組織のノウハウが後戻りするという悲劇は防げる。一人ひとりの経験を無駄なく全体へ還元するこのアプローチが、人手不足に悩む企業にとって、持続可能な業務基盤を構築する一手となるだろう。

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