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2026.08.24

格差5.6倍。生成AIの利用データが示す業界の「温度差」

あらゆるビジネス現場で生成AIの活用が広がっている一方で、その浸透速度はすべての業界で均一に進んでいるわけではない。教材や提案書の作成など、文章生産が日常業務の大半を占める知識産業と、人命や高度な機密情報、厳格な法規制に向き合う産業との間には、依然として埋めがたい活用格差が存在している。
こうした現場の状況を受け、業界ごとのAI利用実態を浮き彫りにした興味深いデータが公開された。2026年8月、株式会社スリスタが発表した実態調査により、日本の企業における業界別AI業務利用率には、最大5.6倍もの開きがあることが明らかになった。首位の教育・人材業界が7割を超える一方、医療・福祉業界は1割強にとどまる。この明確な濃淡は、生成AIの社会実装が「一律の普及フェーズ」を終え、業界特性に応じた個別最適化の段階へ入ったことを示している。(文=AI Base編集部)

トップは教育・人材の76.9%。数字が語る業界ごとのAI事情


(引用元:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)

2026年8月1日、企業のAIマーケティング支援を手掛けるスリスタは、全国の会社員400名を対象に実施した「企業の生成AI活用実態調査2026」の集計結果を公開した。本調査は、業種ごとの業務における生成AIの利用実態や社内統制の整備状況を横断的に分析したものだ。

集計結果において最も顕著な差として現れたのが、業界別の業務利用率である。1位は「教育・人材(76.9%)」、2位は「IT・ソフトウエア・通信(71.4%)」、3位は「広告・マーケPR(62.5%)」となり、情報や文章を扱う業界が上位を占めた。対して最下位となったのは「医療・福祉(13.8%)」であり、これに「公共・行政(23.8%)」「金融・保険(25.0%)」が続く形となった。トップと最下位の間には約5.6倍という大きな開きが存在している。

(引用元:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)

さらに、日常的な利用頻度や社内統制の面でも二極化が進んでいる。「毎日以上使う」と回答した高頻度利用者の割合はIT・通信業界が34.3%に達した一方、医療・福祉業界は0.0%を記録した。また、利用ガイドラインの整備率についても、IT・通信業界が42.9%で突出しているのに対し、医療・福祉、公共・行政、広告・マーケPRの各業界では0.0%となっており、社内ルールの策定が現場の利用実態に追いついていない状況も浮き彫りとなった。

使わないのではなく、使えない。背景に合理的な事情が

今回の調査結果が示唆するのは、業界間の利用率格差が単なるITリテラシーの高低によるものではなく、各産業が抱える業務特性や法規制に根ざした「合理的な判断の結果」が反映されているという点だ。

教育や広告、ITなどの分野では、教材のドラフト作成やコード生成、企画書の下書きといった文章生産業務が多いため、汎用的な生成AIの恩恵を素早く享受しやすい。これに対し、医療や金融、行政などの分野では、患者情報や顧客データの厳格な管理が求められるだけでなく、AIの出力ミスや誤情報が重大な責任問題につながるリスクも抱えている。そのため、汎用ツールを安易に導入せず、セキュリティや安全性が担保された業界特化型のAIシステムを慎重に見定める姿勢が、今回の低利用率に表れている可能性がある。

一方で、利用率が先行している業界であっても、ガイドラインの未整備による情報漏洩や誤出力といった事故のリスクを抱えている実態は見逃せない。事故経験率において広告・マーケPRが37.5%、IT・通信が22.9%を記録している背景には、適切な組織統制を欠いたまま現場での利用が先行している側面があることも否定できないだろう。

2026年、日本の生成AI活用は、全社一律の導入ブームから「自社の業務リスクと特性に応じた現実的な統制」へと移行しつつある。スリスタが提示したデータは、企業が業界内での自社の立ち位置を客観的に見極め、実効性の高いAI運用体制を再構築するための指標となるはずだ。

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