1. AI Base TOP
  2. AI活用の基盤をつくる
  3. 企業の不正やミスを防ぐ「内部統制」をAIが支援

2026.08.21

企業の不正やミスを防ぐ「内部統制」をAIが支援

昨今、企業における不正リスクの複雑化に伴い、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)への適切な対応が求められている。その一方で、評価を担う専門人材の不足と取引データの増大により、従来の「手作業による目視確認」だけでは十分な対応が難しくなりつつある。巧妙化する不正リスクに対し、評価実務の実効性をいかに確保するかは、上場企業にとって重要な課題となっている。
こうした人手による確認の負担を軽減するため、専門業務に特化したAIを活用する新たなアプローチが提示された。ジュリオ株式会社と宝印刷株式会社は、2026年9月にJ-SOX評価をAIで支援する「ジュリオ統制評価AI」および「WizLabo Keeper」の提供開始を予定している。証拠資料と確認手続きの照合をAIが支援し、最終判断は人が行うこの仕組みは、企業のガバナンス維持を支える基盤の一つとなり得る。(文=AI Base編集部)

公認会計士の知見を実装。照合と指摘に特化した伴走型AI


(引用:PR TIMES) 

2026年9月、AIサービスの開発を手掛けるジュリオと、ディスクロージャー支援市場をリードする宝印刷は、経営者による内部統制評価を支援するクラウド型サービスを同時にリリースする見通しだ。本サービスは、ジュリオからは「ジュリオ統制評価AI」、宝印刷からは開示業務支援プラットフォームの一環である「WizLabo Keeper」として提供され、正式提供に先立ち、先行デモやテスト導入の相談受付が進められている。
最大の特長は、内部統制評価業務への特化と照合精度の高さにある。契約書や請求書といったエビデンス(証拠資料)、および評価手順を定めた3点セット(RCM、業務記述書、フローチャート)をAIが自動で読み込み、形式だけでなく記載されたテキストや日付・金額の整合性まで精査する。不整合や注意すべきポイントをAIが指摘することで、従来は熟練した担当者の目視に頼っていた泥臭い確認作業を大幅に効率化する。


(引用:PR TIMES)  

ここで重要なのは、AIの役割を「読み込み・照合・指摘」までにとどめ、最終的な評価の結論は必ず人間が下す設計にしている点だ。この厳格な分業により、評価プロセス全体の透明性と監査耐性も担保されている。このように実務に即した設計となっている背景には、公認会計士でもあるジュリオ株式会社 代表取締役 姥貝 賢次 氏の専門的な知見がある。
さらに、本サービスの中核となる文書照合技術などについては、複数の特許が出願中とされている。特許出願は、同社が独自技術の権利化を進めていることを示す一方、技術の優位性も、汎用AIでは代替できない高度な専門性を裏付ける要素となっている。

汎用AIから業務特化へ。開示とガバナンスを支える技術基盤

ジュリオと宝印刷による共同展開が示唆するのは、ビジネスの現場におけるAI活用が「一般的な文章作成や助言」から、「高度な専門業務への組み込み」へと本格的にシフトしつつあるという事実だ。
対話形式の汎用的な生成AIでは、内部統制評価のように独自の評価手順や厳格な判断基準が求められる実務をそのまま代行することは難しかった。しかし、専門知識と実務プロセスを学習させた特化型AIであれば、一連の評価ワークフローに直接伴走できる。これは、専門人材の不足に直面する企業にとって、ガバナンスの質を落とさずに業務負荷を軽減する有効な解決策となるだろう。
さらに、開示支援市場をリードする宝印刷が自社ブランドとして本サービスを同時展開する意義も大きい。企業の情報開示を支えてきた市場のリーダーが、開示から内部統制・不正抑止へとアプローチを広げることで、企業のガバナンス基盤と資本市場からの信頼性が一体となって強化される仕組みが整うからだ。
企業向けAIソリューションの導入は「作業の短縮化・効率化」にとどまらず、「組織の統制と信頼性を担保するインフラ」へと領域を拡大しつつある。両社が提示した新たな評価基盤は、上場企業が人手の限界を克服し、持続可能な経営統制を確立するための足がかりとなるはずだ。