決算や支払いなどを担う経理業務では、1円単位の正確性が求められる。生成AIの活用が広がる中でも、経理領域では出力の正確性や再現性に対する懸念から、導入は限定的だった。特に数値処理や会計判断を伴う業務では、高い精度が求められるためだ。
2026年5月1日、Sansan株式会社が発表した「経理の働き方に関する実態調査」の結果は、この現実を克明に映し出している。対話型AIを活用している層でさえ、経理特有の核心業務への適用は2割に満たない。利便性とリスク、そして「ミスが許されない」というプロ意識の狭間で揺れる経理現場の今を追う。(文=AI Base編集部)

(引用元:PR TIMES)
Sansanが経理担当者2,112名を対象に実施した調査によれば、業務で対話型AIを使用していない層は全体の60.2%に達した。2023年の生成AIブームから数年が経過した現在においても、過半数の経理担当者が実務への導入を控えている実態がある。
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活用している層においても、その用途は「メールやチャットの文章作成・添削(43.7%)」や「経理・税務用語の一般的な検索・調査(39.0%)」といった汎用的な事務作業が中心だ。一方で、経理本来の核心業務である「財務データの分析・レポート作成(17.7%)」や「試算表・決算書・銀行明細などの数値照合・チェック(10.8%)」、「勘定科目や税区分の判定・仕訳データの作成(9.3%)」への適用はいずれも2割を切り、極めて限定的な範囲にとどまっている。
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この活用の遅れを招いているのは、生成AI特有の不確実性だ。調査では活用の障壁として「正確性への不安(38.8%)」が最多となり、「セキュリティーに関するリスク(35.7%)」がそれに続いた。
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一箇所のミスが決算の修正や納税の不備に直結する経理の現場において、ハルシネーション(事実に基づかない情報の出力)のリスクを抱えるAIに数値処理を委ねることは、利便性を上回るリスクとして認識されているようだ。
生成AI単独では、経理業務における壁を越えられない。その背景には、各社独自の細かなルールや商慣習の壁がある。AIに対して正確な指示を重ねる工数や出力結果を人間が再確認する手間を考慮すると、従来通りの手作業の方が効率的であるという逆転現象が起きやすいからだ。
この膠着状態を打破する鍵は、AI以外の技術も含めた「適材適所」の組み合わせにある。Sansan株式会社 Bill One事業部 VPoP 笠場 愛翔 氏によれば、100%の精度が求められる領域は「ルールベース」で処理し、過去の膨大なデータから予測可能な業務は従来の「機械学習AI」で対応、そして過去に例のない新規取引へのサジェストなどにのみ「生成AI」を適用するという使い分けが有効だという。
このように複数のテクノロジーを実務に合わせて調和させるアプローチは、AIを単独の「万能ツール」としてではなく、高度に統合された「インフラの一部」へと進化させる。ユーザーがAIの存在を意識することなく、システムの裏側で最適な知能が駆動する。この統合された環境こそが、経理業務を「こなすべき作業」から「なくせるプロセス」へと変えていくための必要条件となるだろう。
経理DXは「万能なAI」という過度な期待を捨て、実務に即した「機能の再定義」という入口にようやく辿り着いた。単一の技術に依存せず、複数の手段を適材適所で使い分ける。この現実解に立ち返ったことで、経理の現場は「寸分狂わぬデータの合致」という確かな手応えをつかみ始めることになるだろう。