外出先から社内へ「あの案件の進捗を教えて」と電話をかける。そんな日常的な問い合わせに対し、これからは同僚のスタッフに代わって、AIが受話器の向こうで即座に回答を返す光景が当たり前になるかもしれない。
バックオフィスでは、社内からの電話による確認業務が少なくない。問い合わせる側は回答を待ち、対応する側は手を止めてシステムを確認する。その積み重ねが、組織全体の生産性を少しずつ蝕んできた。こうした課題に対し、人間同士の会話をAIが聞き取り、社内システムと連携して必要な情報を即座に返答する仕組みが登場した。電話という身近なインターフェースを入り口に、業務プロセスそのものを変革する新たなテクノロジーが動き出している。(文=AI Base編集部)
2026年4月30日、AIソリューションの開発などを手掛ける株式会社AVILENは、社内における電話での問い合わせ対応を自動化する「生成AIボイスボット」の提供を開始したと発表した。
(引用元:PR TIMES)
多くの企業において、外出中の営業担当者が顧客への訪問直前に最新の情報を確認したい場面は頻繁に発生する。移動中などで自社のシステムを直接操作できない場合、社内の営業サポート部門へ電話をかけて確認する運用が常態化している。しかし、案件を特定するための情報の聞き出しに手間がかかり、サポート部門の工数が増大するだけでなく、営業担当者にも待ち時間が発生するという課題があった。
この状況を打開するために開発されたのが、音声認識と生成AI、そしてシステム連携を統合した高度な対話システムである。大手情報通信企業における導入検証を経て高い実用性を確認し、今回の正式提供に至った。
最大の特徴は、AIが能動的にヒアリングを行い、案件の特定を自動化する点だ。従来のシステムでは対応が難しかった自由度の高い問い合わせに対しても、AIが順序立てて必要な情報を聞き出す。さらに、独自のAPI連携によって社内の基幹システムをリアルタイムで参照し、契約ステータスや稼働状況を電話口で即座に回答。AIでの完結が困難な複雑なケースについては、既存の確認用ポータルサイトへ音声で案内するなど、実務に即したハイブリッドな対応も可能となっている。
企業内のコミュニケーションにおいて、「電話」は極めてアナログな手段である。履歴が残りにくく、対応する人間の時間を強制的に奪ってしまう。一方で、スマートフォンさえあればどこからでも手軽に発信できるため、スピードを重視する現場の営業担当者にとっては手放すことのできない重要なツールでもある。
テクノロジーを導入して業務を効率化しようとする際、企業はつい「電話を廃止し、専用のシステムから入力させる」という方向へ進みがちだ。しかし、それでは現場の負担が増し、結果として新しいシステムが定着しない原因となってしまう。
今回のアプローチが優れているのは、現場の担当者が使い慣れた電話というインターフェースをそのまま残しつつ、その裏側にある処理をAIによって自動化した点にある。AIが人間の口頭での依頼を正確に聞き取り、構造化されたデータに変換して基幹システムと照合する。これにより、営業担当者は場所や時間を選ばず、電話一本で最新の情報を把握でき、商談前の準備を劇的に加速させることができる。
開発元であるAVILENは、「データとアルゴリズムで、人類を豊かにする」というパーパスを掲げている。電話での対話内容がすべてデジタルデータとして蓄積されることで、現場がどのような情報を頻繁に求めているのかを客観的に可視化できるようになり、次なる業務改善の大きなヒントとなるのだ。
音声によるアナログなやり取りをAIがシステムと直結することで、企業内の情報伝達はよりスムーズになる。情報入力や共有にかかる負担が減れば、人は本来注力すべき創造的な業務に時間を割けるようになる。こうした環境整備は、変化の激しい市場を勝ち抜くための強固な組織基盤づくりにもつながるだろう。