「メニューはどこだ」「あの設定画面はどこに隠れているのか」。スマートフォンが普及し、あらゆるサービスがアプリ化された現代において、私たちは日々「画面を探す作業」に貴重な時間を奪われている。機能が豊富になるほど画面の構造は複雑化し、ユーザーは迷子になる。このUI(ユーザーインターフェース)の限界を、生成AIの力で根底から覆すアプローチが日本の金融業界で産声を上げた。
ユーザーの言葉を理解し、その瞬間に必要な操作画面をAIが自動で作り出す「ジェネレーティブUI」の登場は、すべてのデジタルサービスにおける顧客体験を再定義する強烈なインパクトを秘めている。(文=AI Base編集部)
2026年2月27日、インターネット専業銀行などを手掛ける住信SBIネット銀行株式会社は、AI銀行サービス「NEOBANK ai」エージェントのベータテストを開始した。自然言語での依頼をもとに、取引や目的に応じた画面をその場で生成して実行できるAIエージェントを銀行アプリ上で顧客に提供するのは、日本の銀行として初めて(※)の試みとなる。
※2026年2月14日時点 住信SBIネット銀行株式会社調べ
(引用元:PR TIMES)
この機能の最大の特徴は、従来の「どこに何があるかを探して操作する」という体験を完全に置き換える点にある。例えば、「田中さんに1万円、山田さんに2万円送りたい」と日常的な言葉でチャットに入力するか音声で話しかけるだけで、AIが目的をくみ取り、複数先への振込操作画面をその場で生成してくれる。ユーザーはアプリ内の複雑なメニューをいくつもタップして振込画面を探し回る必要はない。スマートフォンの音声入力を活用すれば文字を打つ手間すら省けるため、まるで銀行の窓口で担当者と直接会話しているかのような感覚で手続きを進められるのだ。
(引用元:PR TIMES)
さらに、振込サポートだけでなく、デビットカードの利用状況をAIが分析して支出の傾向を読み解く機能や、「住所変更をしたい」といった各種手続きの最適な画面へスムーズにナビゲートする機能も備えている。特定の支店に口座を持つ個人ユーザーに向けたベータテストを通じてフィードバックを集め、さらなる機能改善や品質向上に取り組んでいく構えだ。
これまで、企業はいかに分かりやすいメニュー構造を作るか、いかに少ないタップ数で目的のページへ誘導するかという画面設計に膨大なリソースを割いてきた。しかし、提供するサービスが多様化すればするほど、すべてのユーザーにとって直感的な画面を作ることは不可能に近い。結果として、アプリの操作に不慣れなユーザーがサービスから離脱してしまうという課題があった。
今回導入された「ジェネレーティブUI」は、固定されたメニュー画面をあらかじめ用意しておくという従来の設計思想を根本から覆すものである。ユーザーが自分の言葉で「やりたいこと」を伝えるだけで、AIが裏側の複雑なシステムと連携し、その人に今必要な入力フォームやボタンだけをその場で作り出し、目の前に差し出してくれるのだ。
これは銀行アプリに限らず、ECサイト、行政の申請システム、社内の業務ツールなど、あらゆるデジタルサービスに応用できる極めて強力なアプローチである。ユーザーの途中離脱を防ぐだけでなく、操作案内に割かれていたカスタマーサポートの負担を大幅に削減するという点でも、企業側のメリットは非常に大きい。
AIの進化により、テクノロジーの形は「人間が機械のルールに合わせて操作を覚える」段階から、「機械が人間の自然な振る舞いに合わせて形を変える」段階へと突入した。
ユーザーに「探させない」「迷わせない」このジェネレーティブUIのアプローチを自社のサービスにいかに組み込むか。それが、これからのビジネスにおいて顧客のロイヤリティを獲得し、競争を勝ち抜くための新たな生命線となるはずだ。