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2026.11.06

熟練の知をAIへ。自治体が挑む技術継承

自治体の土木・建設部門では、専門的な技術が求められる現場でありながら、数年ごとの人事異動によってノウハウの蓄積が途切れがちだ。全国的な技術職員の減少が進む中、長年の経験に裏打ちされたベテランの知見をどう次世代へ引き継ぐかは、地域のインフラを維持する上での死活問題となっている。
汎用ツールでは対応しきれなかった専門法規や現場知識をAIに宿らせ、組織の共有資産へ変える試みは、人手不足に悩む現場を支える強力な一手となりそうだ。(文=AI Base編集部)

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800冊の専門書を網羅。日常業務から災害対応まで支援

2026年9月8日、基幹産業向けのAI開発を手掛ける東京大学発スタートアップの燈株式会社は、建設業界特化型生成AIエージェント「光/Hikari」が京都市建設局に導入されたと発表した。

(引用元:PR TIMES)

自治体の土木部門では、民間と同様に高度な専門知識が求められる一方、定期的な人事異動によりノウハウの蓄積や継承が難しい構造的課題を抱えている。一般的な生成AIでは建設業の関連法規や設計基準に即した明確な根拠を示しにくいため、専門知識をあらかじめ組み込んだ特化型ツールの採用に至った。

本ツールは、800冊を超える専門書籍や関連基準を網羅している点が特徴だ。京都市建設局では、若手職員が設計基準書を調べて書類の叩き台を作る一次判断の支援や、外部委託会社から提出された設計計算書や工法案を客観的に検証する発注者側のチェック機能として活用。

さらに、施工手順図と現場写真から色分けしたイラストを自動生成し、住民説明資料の作成を容易にする試みも進めている。加えて、橋梁部門の過去資料の検索や、台風・集中豪雨時の復旧工法選定と概算金額の算出など、緊急時の迅速な意思決定にも役立てられる。

京都市建設局土木管理部DX担当の牧氏は「今後10年で技術職員の減少が見込まれる中、ベテラン職員の知識や判断力が活かせる今のうちにAIを導入し、現場へ定着させることが重要だと考えた。すでに日常業務から災害時の復旧対応まで実践的な活用が広がっている。若手が自律的に一次判断できる環境を整え、スムーズな技術継承を実現したい」と期待を寄せる。

現役のうちに知恵を残す。業界特化AIが変える組織力

生成AIを業務に導入したものの、「一般的な質問には答えてくれるが、自社の実務には使えない」という壁に突き当たる企業は少なくない。専門用語や業界独自のルール、法規制が絡む領域において、汎用AIの回答は時に曖昧で、業務上の根拠として採用しにくいからだ。

この課題を突破する鍵となるのが、あらかじめ業界固有の実務知識を深く学習させた「特化型エージェント」の活用と、組織固有のルールの組み込みである。

自社のDXを進める上で、今回の京都市の事例から見習うべきは、「熟練者が現役のうちに知見をAIへ移す」という先回りの時間軸だ。多くの現場では、ベテランの退職間際になってから慌ててマニュアル作りに追われ、結局引き継ぎが間に合わない事態に陥る。しかし、熟練職員がまだ現場で判断を下せる段階からAIを導入すれば、ベテラン自身がAIの回答精度をチェックし、自社ならではのノウハウを学習させていくことができる。

加えて注目すべきは、AIを外部の提案を検証する「自衛のツール」として活用している点だ。発注者側が客観的な判断基準をAIによって持つことで、外部業者との対等なコミュニケーションが可能になる。

人手不足を嘆くだけにとどまらず、残された時間を使って組織の知恵をデジタル資産へ変えていく。この確実な布石を打つことこそが、将来にわたって事業を継続させるための強みとなるはずだ。

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