地方には魅力的な観光地が眠るが、定番スポット以外へ足を運んでもらうのは容易ではない。人が一極集中し、周辺地域には経済効果が波及しない偏りは多くの自治体を悩ませてきた。この課題を打ち破る鍵が、アニメや音楽などの「推し活」の熱量だ。趣味の力をフックに地域全体へ新たな動線を引き、その移動履歴をAIで分析して次の施策に生かす。観光産業のボトルネックを解消する、データとテクノロジーを掛け合わせたプラットフォームの全容を明らかにする。(文=AI Base編集部)
▼AI活用のヒントを毎日掲載!
AI活用の基盤をつくる『AI Base』

(引用元:PR TIMES)
2026年9月、合同会社Local Bridgeは、AIによる最適ルート提案とデジタルマップを組み合わせた次世代おでかけアプリ「ろかとらべる」の配信を開始した。同時に、自治体向けにGPSの行動ログを用いた人流可視化とAIによる施策提案機能を提供する管理ダッシュボードを公開し、実証実験のパートナー募集を開始している。
(引用元:PR TIMES)
地方を訪れる際、「どこに名所があるか知らない」「移動ルートの計算が面倒」といった理由で定番スポット以外に足を伸ばさない旅行者は少なくない。本アプリはこのハードルを下げるため、AIとのチャットを通じてわずか約30秒で、移動時間も考慮した「破綻しないルート」を自動生成。さらに、「推し活」や聖地巡礼に特化したマップを搭載し、マニアックな要望にも応える設計となっている。
(引用元:PR TIMES)
旅行者向けの利便性を高める一方で、裏側では自治体やDMO(観光地域づくり法人)向けの強力なBtoB機能が稼働している。デジタルスタンプラリーシステム「ろからりー」を通じて旅行者の回遊を促し、集積された人流データをダッシュボード「ろかでーた」で一元管理することができる。
(引用元:PR TIMES)
どこに人が集まっているかを示すヒートマップや、実際に移動した「王道ルート」の可視化に加え、県外からの来訪割合や客層の自動集計を行う。専門知識がなくても、これらのデータに基づいた効果的な観光施策を低コストかつ短期間で手軽に立案できる。すでに近畿地方の観光都市などで実証実験が決定している。
自治体が観光客の動態を把握しようとする際、常に立ちはだかるのが「データの収集手段」という壁である。多額の予算を投じて独自の観光アプリを開発しても、旅行者にとって利用する明確なメリットがなければダウンロードすらされない。結果として質の高いデータが集まらず、経験や勘に頼った施策から抜け出せない悪循環が多くの地域で起きていた。
今回のプラットフォームが戦略的なのは、旅行者が持つ「推し活」という強烈な熱量を、データ収集のフックとして利用している点にある。好きなアニメの聖地や特定のインフルエンサーゆかりの地を巡るためなら、旅行者は自発的にマニアックな場所へも足を運ぶ。そこに「面倒な移動ルートの計算をAIが瞬時に代行する」という利便性を提供することで、アプリの利用は自然に促される。消費者向けの価値を徹底的に磨き上げることが、結果として自治体向けの良質なデータ(位置情報や属性)を継続的に生み出すエコシステムの基盤となっているのだ。
データサイエンティストが不在の地方自治体であっても、地域全体の人の流れや人気の「王道ルート」がひと目で把握できる。さらに、誰が・いつ・どのような順序で移動したのか、来訪者のデータを性別・年代・来訪目的などの細かな条件で絞り込んで検索するなど、今後の観光マーケティングに活かせる貴重な周遊データを取得できるのが最大の特徴だ。
一部の観光地に人が溢れるオーバーツーリズムが社会問題化する中、旅行者の関心を分散させ、地域全体へ経済効果を波及させる仕組みは急務である。AIが個人の趣味嗜好を解像度高く分析し、最適な動線を引く。データとテクノロジーに裏打ちされた観光分野のデジタルトランスフォーメーションが、地方の隠れた資産に光を当て、持続可能な地域経済を築くための第一歩となっていくはずだ。
▼AI活用のヒントを毎日掲載!
AI活用の基盤をつくる『AI Base』