旅行の計画を立てる時、かつてはホテル予約サイトで条件を絞り込んで比較するのが当たり前だった。しかし今、「小学生連れにおすすめの宿は?」と生成AIに直接相談する旅行者が増えている。AIの回答はユーザーにとって最初の強力な候補リストとなるが、果たしてAIはどのような基準で宿を選んでいるのか。主要AIの回答傾向を分析した調査結果から、これからの宿泊業界に求められる新たな集客戦略を読み解く。(文=AIBase編集部)
2026年7月、エージェンティックコマース基盤を開発するStellagent株式会社は、「AIおすすめホテル調査(箱根編)」の結果を発表した。ChatGPT、Claude、Geminiなど主要な5つの生成AIサービスに対し、箱根旅行のおすすめホテルを尋ねた調査である。
(引用元:PR TIMES)
夫婦・カップル、子連れ家族、インバウンド、若者の友人旅行、親連れ・大人家族という5つの旅行シナリオを設定し、それぞれ5回ずつ質問を投げかけた。その結果、全621件の有効な推薦のうち、回答に登場した宿泊施設は114施設であった。箱根町内の宿泊施設数が454施設とされる中で、約25.1%の施設がAIの最初の候補リストに挙がった計算になる。
注目すべきは、その推薦が一部の施設に強く偏っている点だ。上位5施設だけで合計193件登場し、全体の31.1%を占めている。最も多く推薦されたのは「富士屋ホテル」で、次いで「箱根小涌園 天悠」「箱根・芦ノ湖 はなをり」と続いた。
また、旅行のシナリオによってAIが選ぶ施設は大きく異なる。例えば「子連れ家族旅行」では「箱根ホテル小涌園」が上位に挙がり、「インバウンド旅行」では「強羅花壇」が強く推奨されるなど、誰と行くかによって明確な評価軸の変化が見られた。さらに、利用するAIサービスによっても推薦される施設数やラインナップにばらつきがあることも確認されている。
旅行者が宿泊先を探すプロセスは、明確な転換点を迎えている。これまではオンライン予約サイトの検索結果や口コミが集客のすべてを握っていた。しかし、旅行の初期段階でAIと自然な言葉で対話し、おすすめの宿から旅程の提案までをトータルで受けるスタイルが普及しつつある。この検索行動の劇的な変化により、AIの回答に自社の施設名が含まれるかどうかが、ビジネスの成否を分ける重要な要素となっている。
AIが回答を生成する際、単に知名度や宿泊価格だけを見ているわけではない。ウェブ上に公開されている施設情報、客室の使いやすさ、温泉や食事の特徴、さらには「どのような客層に適しているか」といった文脈を複雑に解析して推薦リストを作成している。
つまり、宿泊施設側が自社の強みをAIが理解しやすい形で発信していなければ、どれほど質の高いサービスを提供していても、AIの候補から漏れてしまう危険性がある。
今後は公式サイトの情報をただ充実させるだけでなく、自社がどの旅行シナリオで推薦されやすいのかを客観的に分析する作業が必須となる。インバウンド向け、若者の友人旅行向けなど、ターゲットに合わせた情報設計を戦略的に行い、施設名やアクセスの表記揺れを減らしてAIの誤認識を防ぐ対策が強く求められる。
さらには、AIが提案した情報からスムーズに公式の予約導線へと接続する仕組みづくりも急務だ。自社のサイトにチャットボットを導入するだけでなく、外部のAIを新たな顧客接点と捉えて情報を構造化するアプローチをいち早く取り入れた施設が、次世代の集客競争において圧倒的な優位性を確立し、持続的な成長を実現していくはずだ。