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2026.04.15

非定型業務をAI化。銀行が挑む役割分担

ペーパーレス化が進んだ今も、現場にはフォーマットの定まらない書類「非定型帳票」が溢れている。顧客から提出される手書きのメモ、業者ごとにレイアウトが異なる図面や見積書――。これらを読み取り、システムに入力し、内容の整合性を確認する作業は、依然として人の目と判断力に依存してきた。
この労働集約的でミスの許されない業務に対し、生成AIとAIエージェントの力で自動化する実証実験が、厳しいコンプライアンスが求められる銀行業務で劇的な成果を上げた。AIは単なる入力支援ツールから、文脈を読み解き判断を補助する「自律的なエージェント」へと進化を遂げ、人間が本来担うべき高付加価値な業務へのシフトを強力に後押ししている。(文=AI Base編集部)

非定型書類の転記と整合性確認をAIが自律処理

2026年2月27日、株式会社百五銀行と株式会社日立製作所は、銀行における転記業務およびその後の整合性判断といった後続業務の人手依存解消に向け、生成AIとAIエージェントを活用した業務改革を2026年度から順次開始すると発表した。

住宅ローンの事前審査を例にとると、これまで銀行の行員は、顧客から提出される物件資料や図面といったフォーマットがバラバラな書類を目視で確認し、手作業でシステムへ入力していた。さらに、入力内容と申込情報に矛盾がないかを確認する「整合性チェック」まで人手に依存。膨大な時間と労力を要していた。

(引用元:PR TIMES

今回の取り組みでは、この一連のプロセスを2段階でAI化する。まず、生成AIが非定型書類から必要な情報を抽出し、システムへ自動登録。続いてAIエージェントが登録されたデータと関連情報を照合し、内容に齟齬がないかの判定や、潜在的なリスクの洗い出しを自律的に行う。

2025年8月から半年間実施された効果検証では、1件あたり約20分かかっていた作業が7分以下に短縮。作業時間はおよそ3分の1となり、品質も一定水準を満たすことが確認された。

「作業」はAIへ、「判断」は人間へ。役割分担の最適解

この取り組みの本質は、生成AI時代における「人間と機械の正しい役割分担」のモデルケースを明確に提示したことにある。

従来のDXは、決まったフォーマットの書類をOCR(光学文字認識)で読み取るといった「定型業務の効率化」にとどまっていた。しかし、生成AIとAIエージェントの登場により、AIは「情報の抽出(作業)」だけでなく、「文脈の理解と矛盾の検知(分析)」といった分析領域まで担えるようになった。

だからといって、AIが人間の仕事をすべて奪うわけではない。百五銀行の取り組みにおいて重要なのは、AIエージェントが自律的に整合性を判定した上で、最終的な「審査の判断」は必ず行員に委ねるというプロセス設計だ。人間は、AIが整理し、リスクを可視化してくれたデータをもとに最終決断を下す役割に特化する。これにより、担当者のスキルや経験値による作業品質のばらつきが解消され、業務全体のクオリティが均一化される。

さらに、入力作業から解放された人的リソースを、顧客へのコンサルティングや提案といった「人間にしか生み出せない価値」の創造へと振り分けることができる。

非定型の事務作業に悩むのは金融業界に限らない。あらゆる企業に共通する課題だ。生成AIを「高度な作業者」、AIエージェントを「優秀な分析アシスタント」として業務フローに組み込み、人間が決断と創造に専念する。この新しい協働の形こそが、あらゆる企業の生産性を劇的に引き上げる次世代のオペレーション標準となっていくはずだ。