スマートフォンの顔認証や迷惑メールフィルター、商品レコメンデーションなど、これらのAI機能の多くは「教師あり学習」という技術で実現されています。本記事では、AIの中でも特に広く使われているこの学習方法について、分かりやすく解説します。
教師あり学習とは、「入力データ」と「正解(ラベル)」のセットを大量に学習させることで、新しいデータに対しても適切な答えを出せるようにする方法です。
名前の「教師あり」は、学校の先生が「これが正解です」と教えながら生徒を指導するイメージから来ています。AI技術の中でも最も直感的で分かりやすい学習方法と言えるでしょう 。
(引用元:DX/AI研)
例えば、猫の写真を認識するAIを作る場合、
4.新しい写真を見せたとき「猫である確率は97%」といった判断ができるようになる
このような「正解付きデータで学習し、未知のデータを予測する」というプロセスが、教師あり学習の基本です。
ここで整理しておきたいのは、「機械学習」と「教師あり学習」の関係です。機械学習はAIがデータから学習する手法全般を指す広い概念であり、その中に以下のような種類があります。
●強化学習:試行錯誤と報酬から最適な行動を学習
つまり、教師あり学習は機械学習の一種であり、特に広く使われているアプローチなのです。
教師あり学習は、私たちの日常生活のさまざまな場面で活躍しています。
スマートフォンの顔認証や音声認識機能は、教師あり学習の代表的な応用例です。何千万もの顔画像や音声データを「正解ラベル」と共に学習することで、高い精度で個人を識別できるようになっています。
Eコマースサイトでの「おすすめ商品」も、教師あり学習の恩恵によるものです。これまで購入した商品や閲覧履歴をもとに、「この商品を見た人はこれも買いました」という関連性を学習し、次の購入を予測します。
金融分野では、クレジットカードの不正検知に教師あり学習が不可欠です。過去の取引データから「不正」と「正常」のパターンを学習し、怪しい取引をリアルタイムでブロックします。これにより、年間何十億ドルもの詐欺被害を防いでいるのです。
医療分野では、X線やMRI画像から病気を診断支援するシステムに応用されています。熟練した医師の診断結果をラベルとして学習することで、早期発見率を向上させています。
このように教師あり学習は、大量のデータと明確な「正解」がある分野で威力を発揮します。私たちが便利だと感じるデジタルサービスの多くは、この技術に支えられているのです。
教師あり学習は、AIの学習手法の中で最も基本的でありながら、現実世界の多くの問題を解決できる強力なアプローチです。「入力と正解の関係性を学ぶ」というシンプルな考え方が、さまざまな革新的なサービスや製品を生み出しています。
教師あり学習の本質は、「経験から学ぶ」という人間の学習プロセスと共通しています。正解を教えられながら少しずつ賢くなっていくという点で、人間の学習に最も近いAI技術だと言えるかもしれません。教師あり学習は、今後もAIの基盤技術として進化を続け、私たちの生活やビジネスのさまざまな場面で活躍していくはずです。