1. AI Base TOP
  2. AI活用の基盤をつくる
  3. 言葉でBIMを操作。現場を救うAI技術

2026.08.13

言葉でBIMを操作。現場を救うAI技術

建設やインフラの維持管理において、建物の立体モデルと情報を統合する「BIM/CIM」の導入が進んでいる。しかし、その恩恵を享受するには専用ソフトの複雑な操作スキルが必要であり、多忙な現場に定着しづらいという壁があった。もし自然言語で話しかけるだけで、AIが複雑なモデルを操作し必要な情報を瞬時に抽出してくれるとしたらどうだろうか。現場のハードルを極限まで下げる、新たなAI機能の価値を探る。(文=AIBase編集部)

複数AIが連携して処理。自然言語でモデル操作

2026年7月、システム開発などを手掛ける株式会社アーリーリフレクションは、BIM/CIM施設管理クラウド「BIMSTOK」のAIアシスタント機能を大幅に刷新したと発表した。

BIM/CIMとは、建物の3次元モデルに設備の仕様や点検履歴などのデータを紐づけた情報基盤だ。国土交通省が原則適用を推進しているものの、維持管理の現場では複雑なソフトの操作や専門知識が求められるため、十分に活用されていないケースが少なくない。

(引用元:PR TIMES

今回のアップデートは、この専門性の壁を「言葉」で乗り越える試みだ。利用者が「2階の窓の数と総面積を教えて」「外壁を非表示にして柱だけ表示して」と自然な言葉で指示を出すと、AIがモデル内の要素を瞬時に特定し、集計や画面操作を代行する。

(引用元:PR TIMES

この高速かつ高精度な処理を裏で支えているのが、複数のAIエージェントによる分散処理アーキテクチャである。利用者の質問をルーターAIが解析し、「情報検索」「数量集計」「モデル操作」といった役割ごとに専門のAIへタスクを振り分ける。この仕組みにより、従来比で最大5倍という驚異的な応答速度を実現した。人間がマニュアルを見ながら手作業でモデルを操作し情報を探すよりも、圧倒的に短時間で必要なデータへアクセスできる。特別なトレーニングを受けなくても、誰もが直感的に高度な情報基盤を活用できる環境が整った。

操作から対話へ。システム活用のパラダイム

今回の機能刷新を見つめると、企業が導入する高度な業務システムのあり方が「人間が操作を覚える」段階から、「システム側が人間の言葉を理解して動く」段階へシフトしていることがよく分かる。

新しいITツールが導入されるたびに、現場の担当者は分厚いマニュアルと格闘し、操作研修に貴重な時間を奪われてきた。特にインフラ管理の現場では、日々の点検やトラブル対応に追われており、専門的なソフトの学習コストを捻出するのは非常に困難だ。結果として、一部の専門部署だけがシステムを扱い、現場との間に情報の分断が生じてしまう。

複数のAIエージェントが裏側で連携するアーキテクチャは、この見えない摩擦を完全に消し去る。ユーザーから見れば、単一の優秀なアシスタントにチャットで話しかけているだけだ。しかしシステム内部では、専門知識を持った複数のAIが瞬時にタスクを分担し、最適な答えや動作を導き出している。人間がシステムの仕様に合わせるのではなく、システムが人間の自然な思考プロセスに寄り添う。これこそが、最先端のAI技術を現場の実務へ落とし込むための最適解と言えるだろう。

同社は今後、同社は今後、点検記録や関連資料などの情報を横断的に理解し、過去の履歴を踏まえた提案ができる機能の開発を進めていくという。

AIがソフトウエアの「操作パネル」を代替し始めたことで、あらゆる業務ツールは専門家だけの特権ではなくなる。複雑なシステムを誰もが日常の対話の中で使いこなす。技術の進歩が人間の学習コストを劇的に引き下げ、本質的な意思決定に集中できる未来が、建設業界の最前線から力強く広がっている。