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2026.07.15

巨額流出を防げ! AIが変えるDeFi(分散型金融)の安全基準

完璧に書かれたはずのプログラムコードの裏側で、数億ドルもの資産が一瞬にして霧散する。近年のDeFi(分散型金融)における巨額流出事件の多くは、コードそのものの欠陥ではなく、設定や運用、外部環境との相互作用といった「プログラムの外側」に潜むわずかな歪みから引き起こされている。人間による監査では捉えきれない、この新たなる重大なリスクをいかに制御すべきか。オンチェーン金融(※)が巨大な経済圏へと膨張するなか、AIを用いた防壁の構築が始まっている。
2026年6月、アライドアーキテクツ株式会社は一般社団法人Nyx Foundationと共同で、AIエージェントを用いてDeFiプロトコルのセキュリティ耐性を検証する実証実験を開始した。AIバグ発見システム「SPECA」などを駆使し、運用の不備までを数学的に保証する。この取り組みは、不確実なオンチェーンの世界に「予見性」と「説明責任」をもたらすための有力な実装モデルを提示しようとしている。(文=AI Base編集部)

(※)オンチェーン金融…ブロックチェーン上で取引が完結する金融サービス

「設定ミス」を逃さない。AIエージェントが人間による監査の限界を超える


(引用元:
PR TIMES

DeFiに預け入れられた資産は、2026年において1,000億〜1,700億ドル規模に達している。扱う金額が巨大化するほど、従来の「人間によるスポット的な監査」の限界が顕在化している事実は否めない。2026年6月10日に発表された実証実験は、こうした実態を踏まえ、AIエージェントによって市場の安全性を底上げすることを目指したものだ。

(引用元:PR TIMES

防御の最前線は、単なる「コードの正しさ」の確認から、いかに運用を含めて継続的かつ再現可能な形で検証できるか、ここに移りつつある。象徴的な事例が、2026年4月に発生したLayerZeroにおける約2.9億ドルのエクスプロイト攻撃だ。この事故の原因はプログラム本体ではなく、運用時の設定ミスに起因するものであった。実のところNyx Foundationは、事故発生の5カ月前にAIバグ発見システム「SPECA」を用いてこの脆弱性を指摘していた。だが、当時は「プロトコル外の問題」として対処が見送られていたという。

(引用元:PR TIMES

実証実験では「SPECA」と形式検証エージェントを組み合わせ、属人性を排した網羅的なセキュリティ評価を実施する。具体的には、利回り型ステーブルコインやレンディングといった代表的なDeFiプロトコルを対象に、ロジックからガバナンスまでをチェックし、その判断プロセスをJSON形式のログとして記録する。この仕組みにより、脆弱性が疑われる箇所の再現性をコードレベルで確認できるだけでなく、第三者が検証可能な「追跡可能性」も確保されることになる。

「信頼」を自動生成。AIが担う「証明書の発行者」としての役割

今回の実証実験が描き出しているのは、オンチェーン金融の安全性が、人間の直感や経験に頼っていた段階を終え、AIによる継続的な監視と証明を実施する段階へと移行したという点だ。

上場企業や機関投資家がオンチェーン金融へ参入する際、大きな壁は「リスクの予見性(最大損失額の定量化)」をいかに担保するかにある。最大損失額が定量化されず、判断根拠が説明できない状態では、多額の資金を投じることは難しい。これに対し、AIエージェントによる動的な評価は、曖昧なリスクを可視化することで、投資判断に必要な「予見性」を提供するインフラとなりうる。これは、2025年末に300億ドルを超えたRWA(トークン化された現実資産)市場のさらなる拡大を支える基盤にもなるはずだ。

また、AIが単なる「バグ発見器」にとどまらず、資産がさらされているリスクの状態を可視化する「証明書の発行者」へと進化している点も注目に値する。安全性の根拠が公開ライブラリとして蓄積され、誰もがいつでも追跡できる環境が整えば、利用者にとっての安心感は飛躍的に高まる。今後はこのような透明性の確保こそが、伝統的な金融資本をオンチェーンの世界へと呼び込むための条件となっていくだろう。

日本の資産AX(AIトランスフォーメーション)は、知能によって「信頼」を自動生成する段階に入った。安全性の評価手法を確立しようとするアライドアーキテクツの試みは、Web3と伝統的金融が融合する未来において、決定的な共通言語となるのではないか。AIがリスクを制御し、人間がそれに基づいて高度な意思決定を行う。このガバナンスの形が、日本の金融市場に新たな流動性をもたらす契機となることが期待される。