欲しいものを探すとき、私たちは長らく検索窓にキーワードを打ち込んできた。しかし今、スマートフォンの向こう側に構えているのはアルゴリズムではなく、こちらの意図を汲み取るAIへと変わりつつある。ユーザーは自身の漠然とした悩みや要望をAIに語りかけ、そこから返ってくる提案を起点に購買行動を開始しているのだ。
2026年6月、株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズが公開した調査レポートは、こうした消費者の行動変容を鮮明に描き出している。情報の海を自力で回遊する時代は終わり、対話を通じて最適解へと最短距離で導かれるという、購買行動の抜本的な再構築が始まっている。(文=AI Base編集部)

(引用元: PLAN-Bマーケティングパートナーズ公式サイト)
2026年5月に実施された「生成AIとの対話による購買行動調査 2026」は、週に数回以上、生成AIで調べものをするユーザー500名を対象としたものだ。この調査結果によれば、生成AIとの対話をきっかけに「商品の購入」を決定したことがあるユーザーは54.1%に達し、前年の調査から11.4ポイントの大幅な伸びを記録した。また「行き先(旅行先やレストランなど)」を決定したユーザーも50.4%と半数を超えており、生成AIが消費者の意思決定において無視できない存在となっていることが分かる。
(引用元: PLAN-Bマーケティングパートナーズ公式サイト)
商品の購入に至ったカテゴリは多岐にわたる。パソコン・スマートフォン・周辺機器が40.9%で最多となったが、アパレルや食品、さらには家電や金融商品といった、比較検討に複雑な条件整理を必要とする分野でも活用が進んでいる。
(引用元: PLAN-Bマーケティングパートナーズ公式サイト)
行き先の決定に関しては、特に飲食店カテゴリで66.7%という高い数字を記録しており、場所や予算、評判といった複数の条件を対話の中で整理する利便性が、ユーザーに広く受け入れられていることがわかる。
(引用元: PLAN-Bマーケティングパートナーズ公式サイト)
特筆すべきは、AIとの対話の内容だ。従来の検索のように特定のブランド名や製品名を指定するのではなく、「くせ毛で悩んでいる」「予算2万円以内で耐久性の高いスーツケースが欲しい」といった、個人の悩みや抽象的な要望から検索がスタートしている事例が多く見られる。AIがユーザーの置かれた状況を解釈し、膨大な選択肢の中から最適な候補を絞り込むというプロセスが、購買行動の最上流に組み込まれている実態が浮き彫りになったと言えるだろう。
今回の調査結果が示唆するのは、消費者のカスタマージャーニーにおける検索エンジンの役割が、「発見」から「確認」へと変化しつつあるという事実である。
調査によると、生成AIが提案した商品について、約9割のユーザーがGoogleなどの検索エンジンを用いて追加検証を行っている。これは、ユーザーがAIの回答を最終的な結論として鵜呑みにしているわけではないことを示している。まずAIとの対話を通じて「自分に合う候補」を効率的に見つけ出し、その後に検索エンジンやSNS、ECサイトのレビューを巡って情報の正誤や世間の評判を確かめる。つまり、AIが購買の入り口を司る「門番」となり、検索エンジンは最後に背中を押すための「答え合わせ」の場へとその立場を変えたのである。
この構造変化は、企業のマーケティング戦略において抜本的な見直しを促すものだ。これまでは検索結果の目立つ位置に自社を表示させる「SEO」が主戦場であったが、今後は生成AIに適切に認識され、推奨されるための情報設計が企業の競争力を左右することになる。AIというフィルターを通らなければ、消費者の比較検討の土俵にすら上がれない時代が到来しつつあるからだ。
2026年、マーケティングの要諦は、いかに消費者とAIの対話の中に自社ブランドを登場させるかに移り始めている。AIとの対話から始まる消費者の新たな行動特性を正確に捉え、それに基づいた情報戦略を再構築するアプローチは、AIと検索エンジンを往来する一連の意思決定フローを攻略するための有力な手段となるだろう。