あのプロジェクトの議事録はどこか。数年前の提案資料に記された正確な数値は何だったか...。クラウドストレージ「Box」は大量の情報が蓄積される一方で、必要な情報を見つけ出しにくくなる側面もある。どれほど高度な生成AIを導入しようとも、検索の範囲が特定のフォルダに限定されている限り、組織全体の知恵を最大限に引き出すことはできない。情報の分断こそが、知的生産性を損なう深刻なボトルネックとなっている。
2026年3月、株式会社ナレッジセンスが提供を開始した「Box全体検索」機能は、このフォルダの壁をデジタル技術で無効化するものだ。権限の範囲内で全ファイルを横断的に検索し、AIエージェントが回答の根拠として活用する。AIが組織の記憶を縦横無尽に駆け巡るとき、社内データの価値はどのように再定義されるのだろうか。(文=AI Base編集部)
(引用元:PR TIMES)
ナレッジセンスは、法人向けAIエージェントツール「ChatSense(チャットセンス)」の新機能として、Box上のデータを横断的に検索・活用できる「全体検索」オプションをリリースした。すでに東証プライム上場企業を含む500社以上に導入されている同ツールは、今回のアップデートによりナレッジ管理のあり方を一段上のステージへと引き上げている。
本機能の核心は、従来のフォルダ単位での学習指定を不要にした点にある。利用ユーザーがアクセス権限を持つBox上のすべてのファイルを対象に、AIが横断的な検索を実行。テキストファイルはもちろん、画像や図表データを含む複雑な資料も高精度に解析し、回答の根拠として抽出する。ユーザーはフォルダ構造を把握していなくても、自然言語で質問するだけで膨大なデータの中から必要な情報を即座に手にすることができる。
(引用元:PR TIMES)
セキュリティ面においても法人向けの厳格な基準を遵守している。検索範囲はあくまで各ユーザーの現行の権限に基づき、学習データが他社のAIモデルに利用されることもない。管理者による手作業でのデータ整理やタグ付けを介さず、安全かつシームレスに「社内情報の構造化」を実現した意義は極めて大きいといえるだろう。
ChatSenseによる横断検索機能の普及が示唆するのは、企業の情報資産の扱いが「保管」から「能動的な再利用」へと舵を切ったことである。
これまでの情報収集は、特定の場所を「探し当てる」という人間側の記憶力や整理能力に依存する側面が大きかった。しかし、AIによる横断検索は、内容や文脈に基づいて複数の情報を関連づけながら検索できる点が特徴だ。部署間にまたがる類似の成功事例や過去の失敗の教訓をAIが自律的に発見・提示することで、組織内での情報の再利用性が飛躍的に向上し、無駄な試行錯誤を劇的に削減できるのだ。
また、本機能はガバナンスと利便性を両立させるナレッジDXの有力な処方箋となるだろう。膨大なデータが蓄積され続ける現代において、人手による完璧なフォルダ整理はもはや不可能に近い。AIがカオスなデータの中から必要な価値を抽出する運用モデルが定着すれば、企業は情報の散逸を恐れることなく、安全に「社内知見の再利用」を最大化させることが可能になるだろう。
社内データの活用は、整理を前提とする段階を脱し、AIが組織の記憶を統合的に管理する実務へと移行した。ナレッジセンスが提示したモデルは、必要な情報へのアクセス性を高め、企業の意思決定を加速させる新たな知的インフラとなるだろう。AIが情報の断絶を埋め、組織全体の経験が同期される。この連携が、不確実なビジネス環境における競争優位を形作ることに繋がるはずだ。