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2026.03.04

「役所の電話がつながらない」をAIが解決。高松市が挑む、電話対応の自動化と有人取次のハイブリッド戦略


(引用元:PR TIMES )

行政手続きのオンライン化が進む一方で、市民からの「電話」による問い合わせはなくならない。「つながらない」「夜間も対応してほしい」という市民の切実な声がある一方、現場の職員は頻繁に鳴る電話対応に追われ、本来の業務が寸断されて疲弊していく。この「板挟み」は、多くの自治体や企業が抱える共通の悩みだ。
この課題に対し、香川県高松市がAIを活用した新たな解決策の実証に乗り出した。導入するのは、AIエージェントによる電話応答サービス「Graffer AI オペレーター」。単なる自動音声ガイダンスではなく、AIが市民と会話して定型的な質問に回答し、必要に応じて職員へスムーズに「取り次ぐ」。市民の利便性と職員の生産性を両立させる次世代の窓口対応モデルの構築が始まろうとしている。(文=AI Base編集部)

市民課への電話をAIが一次対応し、職員への取次までを自動化

2026年1月16日、株式会社グラファーは、高松市において「Graffer AI オペレーター」の実証事業を開始することを発表した。実証期間は2月2日からの約1カ月間で、まずは電話問い合わせの多い市民課を対象に行われる。高松市の市民課では、多い時で1分に数回という頻度で電話が鳴り響く。その内容は、簡単な手続きの確認から複雑な相談まで多岐にわたり、職員はその都度手を止め、内容を聞き取り、担当の係へ取り次ぐという対応に追われていた。これでは集中して業務を行うことが難しく、また市民にとっても電話がつながりにくいというストレスが生じていた。
 
(引用元:PR TIMES )

今回の実証事業では、この電話対応の「一次受け」をAIエージェントが担う。市民が電話をかけると、まずAIが対応し用件を聞き取る。開庁時間や証明書の手数料といった定型的な質問であれば、AIがその場で回答して対応を完結させる。これにより、市民は電話がつながらないストレスから解放され、待たされることなく必要な情報を得ることが可能になる。また今回の実証では、夜間や土日を含めた時間帯での対応も行い、24時間対応に向けた効果や課題を検証する。一方、AIでは判断が難しい個別具体的な相談や複雑な案件については、AIが用件を整理した上で適切な職員へと電話を取り次ぐ。会話ログの要約や文字起こし機能も搭載されているため、引き継ぎのミスも防げる仕組みだ。

このハイブリッドな対応により、職員は「AIが解決できない、人が対応すべき電話」だけを受けられるようになる。単なる効率化だけでなく、市民サービスの質そのものを向上させる取り組みと言えるだろう。

「人にしかできない支援」に注力する窓口へ

今回の高松市の取り組みは、DX(デジタルトランスフォーメーション)における重要な示唆を含んでいる。それは、DXとは必ずしも「デジタルへの完全移行」を意味するものではないということだ。

特に自治体においては、高齢者をはじめとするデジタルツールの利用が難しい市民への配慮が不可欠であり、電話というコミュニケーション手段を簡単になくすことはできない。しかし、そのままでは現場がパンクしてしまう。そこで、「電話」というアナログなインターフェースを残しつつ、その裏側の処理をAIで自動化するというアプローチは、極めて現実的かつ有効な解となる。このモデルは自治体に限らず、人手不足に悩む企業のカスタマーサポートや、代表電話の対応に追われる総務部門など、幅広いビジネスシーンに応用可能だ。

「スマートシティたかまつ」を掲げる同市は、デジタル技術を活用しつつも「人に寄り添う」姿勢を重視している。AIが電話対応の「窓口」 となり、職員の負担を減らすことで、本当に支援が必要な市民に対して、職員がじっくりと丁寧に向き合える時間を作る。テクノロジーが黒子となって人と人を繋ぐ、そんな「人に優しいデジタル化」が高松市から広がっていくことに期待したい。