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2026.02.19

ロボットに「意識」と「好奇心」を。身体と知能が溶け合うフィジカルAIの最前線

これまで、ロボットとAIはそれぞれ別の道を歩んできた。AIは画面の中で膨大な言葉を操り、ロボットは工場の中で決められた軌道を正確になぞる。しかし、この二つが分かちがたく一つに溶け合ったとき、私たちは「単なる機械」ではない、全く新しい知能の形を目撃することになる。
日本企業の株式会社Forcesteed Roboticsが進めているプロジェクトは、その「融合」の極致を目指すものだ。中国のRealMan Robotics社 が誇る超軽量・高出力な「身体」に、Forcesteed Roboticsが開発する「人工意識」という「脳」を移植する。そこで生まれるのは、自ら考え、周囲を認識し、時には自発的な「好奇心」に従って行動を選択する次世代の自律マシンだ。AIが真の身体性を手に入れたとき、社会の景色はどう変わるのか。(文=AI Base編集部)

ハードウェアの限界を解き放つ。「動作・知能一体型」の衝撃

Forcesteed Roboticsが、中国・北京に拠点を置くRealMan Roboticsのロボット製品に対し、独自のAI・画像認識技術を用いた技術支援を開始した。この提携の核心は、世界最高水準の「身体(ハードウェア)」と、先進的な「脳(ソフトウェア)」を高度な次元で直結させることにある。
 (引用元:PR TIMES

提携先であるRealMan Roboticsは、ヒューマノイドロボット向けの高出力密度アクチュエータ(駆動装置)で知られる世界的なメーカーだ。同社のアクチュエータは、モーター、センサー 、制御系、減速機を一体化した構造を持ち、自重わずか約7kgのアームで5kgの可搬質量を実現するという驚異的な軽量さと高負荷比を誇る。その信頼性は高く、世界中で数多くのヒューマノイドロボットメーカーに採用されている。

Forcesteed Roboticsは、この強固な身体に対し、人工意識「FSR-AC(Artificial Consciousness)」を中心とした知能基盤を統合する。これは、外界を高度に認識する視覚と言語、そして行動を統合した「VLA(Vision-Language-Action)」モデルを中核とするアーキテクチャだ。従来のロボットが、あらかじめ決められたプログラムを忠実に実行するだけだったのに対し、この「知能」を得たロボットは、現場の環境や目的に応じて自ら最適な動作を選択することが可能になる。

 (引用元:PR TIMES )

提供されるソリューションは多岐にわたる。工場内での自動搬送や検査支援はもちろん、空間知能を用いた監視ソリューション「Guardian」、さらには電話オペレーターの代替やカウンター受付業務を自動化するAIオペレーターなど、RealMan Robotics製のロボットアームやセミヒューマノイドをベースにした実用的なパッケージの展開が進められている。ハードウェアの性能を最大限に引き出すために、ソフトウェアがその制約を解き放つ。「動作・知能一体型ロボティクス」という新しいカテゴリーが、日本の産業・サービス分野の現場に浸透しようとしている。

好奇心が生む“自律”の形―― 人間と自律マシンの関係性の再定義

今回の取り組みにおいて最も野心的であり、かつ従来型のロボット開発と一線を画しているのが、「好奇心」という概念をAIに搭載している点だ。Forcesteed Roboticsが開発する人工意識「FSR-AC」は、ロボットが外界を認識し、目的や文脈、さらには「好奇心」に基づいて行動を選択できる知能基盤を目指している。

なぜロボットに「好奇心」が必要なのか。それは、複雑で不確実な現実世界において、あらかじめ全てのパターンをプログラミングすることは不可能だからだ。

想定外の事態に直面したとき、従来のロボットはその時点で停止してしまう。しかし、好奇心駆動型の知能を持つAIは、未知の状況に対しても「何が起きているのかを学びたい」というインセンティブを持って、自発的に試行錯誤を行い、適応しようとする。これが、いわゆる「模倣学習」の高度化を支え、より人間や熟練工に近い「柔軟な振る舞い」を実現するためのエンジンとなる。

このアプローチは、人とロボットのコミュニケーションのあり方も変えていく。指示された言葉の表面的な意味だけでなく、その場の「文脈」を理解することで、人間が細かくコマンドを入力しなくても、ロボットが空気を読んで適切にサポートするような関係性が構築される。電話受付やカウンター業務といった定型化しきれない対人サービスの現場において、この「文脈理解」と「自律的な判断」は欠かせない要素だ。

また、Forcesteed RoboticsとRealMan Roboticsは、日本の現場で得られる精緻な動作データとグローバルなハードウェアプラットフォームを掛け合わせることで、日本市場に特化したデータ利活用型ロボティクスの創出も狙っている。将来的には共同事業体の設立も視野に入れており、単なる「輸入販売」ではなく、ハードとソフトが相互に進化し続ける強固なエコシステムを構築しようとする姿勢が見て取れる。

AIはもはや、画面越しに「正解」を答えるだけの知能ではない。物理的な身体を持ち、周囲に干渉し、人間と共に判断を下しながら成長していく「意志を持つパートナー」へと昇華した。Forcesteed RoboticsとRealMan Roboticsの挑戦は、SF映画の中で描かれてきた「自律的な意識を持つ機械」が、実験室を飛び出し、私たちの日常や産業の屋台骨を支える存在として定着していく未来を現実のものにしようとしている。