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2026.02.11

「空白を埋める作業」からの解放。調査データが語る、AI活用による真の価値は“ストレス減”にあり

朝、PCを開いて最初に取り組む「メールの返信」。相手に失礼のない敬語を選び、適切な文脈を整え、誤字脱字がないか何度も読み返す。この何気ない日常のルーティンが、実は現代のビジネスパーソンの精神を密かに削り続けてきた。真っ白な画面を前に、最初の一文字を打ち出すまでの「心理的摩擦」。この目に見えないコストを、最先端の知能がいま今、劇的に塗り替えようとしている。

株式会社R&Gが発表した「AIで時間が短縮できた作業に関する意識調査」の結果は、技術の進化が単に「時間」という定量的な果実を生み出すだけでなく、私たちの「心」という定性的な領域にどのような変化をもたらしているかを浮き彫りにした。AIが日常のツールとして溶け込んだ今、私たちが向き合うべきは「労働の定義そのもの」のアップデートである。(文=AI Base編集部)


「0 → 1」はAIに託す。文章作成にかかる膨大なリソースの正体

社会人493人を対象に行われた今回の調査において、AIで最も時間が短縮できた作業の第1位に輝いたのは「メール文面の作成(34.5%)」だった。次いで「資料の作成(25.2%)」、「リサーチ(10.3%)」と続く。上位を占めるのはいずれもテキストの生成や解析に関わる業務だ。活用されているツールとしては「ChatGPT」が約7割と圧倒的なシェアを誇り、次いで「Gemini」や「Copilot」が続いている。


(引用元:PR TIMES 

なぜ、メール作成がこれほどまでに高い時短効果を生んでいるのか。そこには、日本特有のビジネスコミュニケーションの複雑さが背景にある。アンケート回答者からは、「日本語の添削や敬語の選択をAIに任せることで、悩む時間がなくなった」という声や、「箇条書きで要件を伝えるだけで下書きが出来上がる」 といった具体的な体験談が寄せられている。

かつて、これらの作業は「自分の頭で考えるべきこと」とされ、個人のスキルとして重んじられてきた。しかし、実際には多くの時間が「定型的な言い回しの調整」や「儀礼的な表現の検索」に費やされていたのが実態だ。調査結果からは、多くのビジネスパーソンが「真っ白な画面を前に悩む、0から1のフェーズ」をAIに委ね、自分自身は「内容の精査や判断、最終的な微調整を行う1から10のフェーズ」へとシフトしている姿が見て取れる。

また、時短の度合いについても「大きく短縮された」と答えた人が約4割に達している点は興味深い。特に、助成金の申請書類や複雑な報告書のドラフト作成において、これまで1時間かかっていた作業が15分に短縮されたといった事例もあり、AIが提供する「たたき台」の精度の高さが、実務のスピードを加速度的に高めていることが裏付けられた。


(引用元:PR TIMES  )

「効率化」の先にあるもの。AIが担う“心理的コスト”の肩代わり

今回の調査データの中で最も注目すべきは、AI活用による変化の第1位が「ストレスが減った(30.6%)」であるという点だ。「他の作業に使える時間が増えた(15.4%)」や「残業が減った(9.7%)」という物理的なメリットを抑え、精神的な平穏がトップに来たことの意味は重い。


(引用元:PR TIMES

私たちが仕事において感じるストレスの多くは、実は「作業そのもの」よりも、その前段階にある「迷い」や「不安」に起因している。苦手な作業をAIに任せられる、あるいは「AIが下書きを作ってくれるから安心だ」というバックアップがあるだけで、業務に向かう心理的ハードルは劇的に下がる。AIは単なる「計算機」や「翻訳機」を超えて、現代人のメンタルコストを肩代わりする「精神的なクッション」としての役割を果たし始めているのだ。

かつて「書類の書き写し」がコピー機の登場によって「作業」へと変わったように、メールをゼロからひねり出す行為もまた、人間が直接手を下すべき「仕事」の範疇から外れつつある。これは、人間の労働が「プロセスの実行」から「結果の決断」へと進化している過程とも言えるだろう。

浮いた時間をどう活用するか。アンケートでは「他の重要タスクへの集中」や「プライベートの充実」、「自己投資」といった前向きな回答が並んだ。しかし、ここで真に問われるのは、空いた空白をさらなるタスクで埋め尽くすことではない。重要なのは、AIが代替できない「相手を思いやる判断」や「非連続なアイデアの創出」といった、人間固有の価値をどこに配置し直すかである。

2026年、AIを使いこなすことが当たり前となった社会において、生産性の差はもはや「ツールの習熟度」だけでは決まらない。AIによって創出された「余裕」を、いかにして質の高い思考や対人関係の構築に充てられるか。ストレスから解放された頭脳を、どのような未来を描くために使うのか。今回の調査結果は、AIというパートナーを得た私たちが、真に「人間らしい仕事」へと回帰するための重要な分岐点に立っていることを示唆している。