
AI活用のあり方は、立場や環境によって大きく異なる。では、国境を越えてビジネスを展開する起業家は、AIの進化をどのように捉え、日々の仕事や生活に取り入れているのか。AI Baseの連載「あの人にAIについて聞いてみた」では、実践者の言葉からAIとの向き合い方を探る。今回は、スイスを拠点に次世代ブロックチェーンの構築に挑む、INTMAX Co-Founderの藤本真衣さんに話を聞いた。(文=AI Base編集部)
お話を聞いたのは・・・

INTMAX Co-Founder 藤本 真衣さん
兵庫県神戸市出身。ビットコイン/ブロックチェーン分野の起業家・エバンジェリストとして「Miss Bitcoin(ミスビットコイン)」の愛称で知られる。大学在学中より家庭教師派遣の営業として活動し、トップクラスの実績を残す。その後、役者活動やコンテンツ制作、IT企業勤務など多様な経験を経て、2011年にビットコインと出会う。2014年に株式会社グラコネを設立し、日本初の暗号資産寄付サイト「KIZUNA」などを展開。現在はスイスを拠点に、Layer2プロジェクトINTMAXのCo-Founderとして活動している。
INTMAX Co-Founderの藤本真衣さんは現在、スイスを拠点にグローバルな事業活動を行っている。共同創業者として関わるINTMAXは、イーサリアムのLayer2として、高いスケーラビリティとプライバシー性の両立を目指すブロックチェーンプロジェクトだ。国や地域をまたいだ取引や決済を、より軽量かつ現実的なものにするインフラ構築を掲げ、多国籍なメンバーとともに開発を進めている。
こうした最前線に身を置く藤本さんは、急速に進化するAIをどのように見ているのか。「私はAIに対して、強い脅威を感じてはいません。むしろ、人間をブーストしてくれる存在だと捉えています」と語る。実際、AIを業務に取り入れることで、自身の仕事のスピードは体感で2倍以上に向上したという。
一方で、楽観一辺倒ではない。「プライバシーが今後どう守られていくのかは、正直まだ不安もあります。そのため、利用規約を確認しながら、リスクを理解したうえで使うようにしています」(藤本さん)。利便性と慎重さを両立させる姿勢が印象的だ。
また、藤本さんはAIの進化がWeb3領域にも新たな可能性をもたらすと見る。特に注目しているのがAIエージェントの存在だ。「もしAIが一人の主体として振る舞うようになれば、物理的な通貨は使えません。そうなると、仮想通貨による決済が自然に広がっていくはずです」(藤本さん)。AIを単なる効率化ツールではなく、新しい経済圏を形づくる要素として捉えている点に、Web3の専門家としての視座が表れている。
多言語・多文化環境で生活する藤本さんにとって、AIは業務を支える欠かせない存在だ。英語で行われるミーティングでは、文字起こしや要約ツールを活用し、聞き取れなかった部分を後から確認する。「会議後に要約を読み返したり、分からなかった表現だけを翻訳したりすることで、相手の意図をより正確に理解できるようになりました」(藤本さん)。
資料作成でもAIは力を発揮する。日本語で作成したプレゼン資料を、同じデザインのままワンクリックで英語やスペイン語等に多言語展開できる点は、越境ビジネスにおいて大きな助けになっているという。さらに、スイスで生活する中で避けて通れないドイツ語の公的文書も、AIで内容を整理し、次に取るべき行動を明確にしている。
「特にクリプトは、最近は国際政治とかアメリカの金融政策等、TradeFiの分野へのキャッチアップが相当必要なので、専門分野をキャッチアップするのに非常に助けになっていると感じます」(藤本さん)。
AIはまた、壁打ち相手としても活用されている。「相談の9割はビジネスの話ですね。考えを整理したり、別の視点を得たりするために使っています」(藤本さん)。人に相談する前段階としてAIを使うことで、思考の質が高まるという。
AIをまだ使いこなせていない人に向けて、藤本さんは身近な例えを挙げる。「ガラケーからスマートフォンに移行したときと同じです。最初は抵抗があっても、一度使うと手放せなくなると思いますよ」(藤本さん)。
実際、親世代でも体調管理の相談や手続きの確認などにAIを活用しているという。重要なのは、完璧に使おうとしないことだ。「まずは簡単なことから触ってみる。それだけで、AIの便利さは実感できるはずです」(藤本さん)。
【AI活用のヒント】
・AIは仕事を奪う存在ではなく、人の能力を拡張する「ブースト役」と捉える
・語学や事務手続きなど、日常のつまずきを解消する用途から導入すると効果を実感しやすい
・難しく考えず、スマートフォンのように「まず触ってみる」ことが活用の第一歩になる