
活躍するビジネスパーソンやクリエイターにAIへの見解や活用術を聞く本連載。今回は、和歌山大学 学長補佐/教授・共同利用共同研究推進室長として、宇宙人材の後進育成を進める秋山演亮さんに話を伺った。実際にAIを活用する学生を指導し、ご自身も学会や研究に勤しむ中で、教授はどのようにAIを活用しているのか。(AI Base編集部)
お話を聞いたのは・・・

和歌山大学 学長補佐 / 教授
共同利用・共同研究推進室長
秋山演亮さん
和歌山大学イノベーションイニシアティブ基幹教授として、学長補佐や共同利用・共同研究推進室長を兼任。専門は固体惑星科学、宇宙教育・科学教育、宇宙政策、地域防災、IoTネットワークシステム設計など多岐にわたり、学際的な研究と教育に取り組んでいる。
秋山さんは、AIの限界を明確に認識している。AIには「これとこれが繋がるのか」といった意外性のあるアイデアを生み出す能力が備わっていないという。そのため研究者の仕事で多くの時間を割く考察やアイデア出しについてはAIを活用していない。むしろ「AIの未熟性」を逆手にとった、専門家しかできない活用術を見出している。下記のAI生成画像を見てほしい。

これは、「宇宙ビジネス」と打った時に生成された画像だ。衛星、ロケット、天体と、一般的なイメージが生成されている。実は、2025年現在宇宙産業の多くを占めるのは、地上システム運用やマネジメントであり、このステレオタイプなイメージとは乖離している。
秋山さんはあえて、世間一般が持つ「宇宙産業」のイメージをAI生成し、実はそのイメージが現実と異なるという説明(語り口)を補強するための手段として自分の資料に活用しているというのだ。
このようにAI技術は現在も発展途上であり、世間に流布している過った内容を生成したり、現実とのギャップが生じたりするリスクが存在する。特にAIを使いこなせていない層に対し、専門家は、単にツールとして利用するのではなく、AIの限界をどう見極めるかという能力を磨くべきだと提言している。
秋山さん曰く、真に磨くべき能力は、AIにできないこと――つまり、アイデア、批判的思考、既存の枠組みの再構築を見つけ出す点だという。「例えば、月面開発におおいてリニアカタパルトを導入し、月面物資を軌道上に打ち上げて資源として活用することは、理論上可能です。しかし月面から放出された岩石などが、『地球に』落下させる兵器に転用されるリスクがあると考えることができるでしょうか?このように、一般的に正しいとされる結論に対し、別の視点を提示できる能力は、AIからは引き出せません」(秋山さん)。
この「AIの限界を見極める力」がなければ、人の能力が発揮できる場所でもAIを頼ってしまう。
学生に対してのスタンスもユニークだ。「AIを使ってレポートを書いてもいいですが、そのまま使っても『面白くない』ため、点数はあげません。一方AIが書いたものが面白ければ評価します。そこにオリジナリティがあるかどうかを常に意識させ、AIを単なる代行ツールではなく、思考を深めるための道具として使うよう促すのが私の考えです」(秋山さん)。
【AI活用のヒント】
・AIの「限界」を理解し、そのギャップを活用する
・AIが苦手な部分こそ人間の勝負どころ(アイデア創出、批判的思考、既存枠組みの再構築)
・生成した素材に、独自の視点・問い・切り口を足しオリジナリティを出す