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2026.01.07

AIは道具、問われる「検証力」~【連載】あの人にAIについて聞いてみた

AI活用は仕事の効率化にとどまらず、家庭や教育の現場にまで入り込み、学びのプロセスそのものをアップデートしている。AIと向き合いながら、活用の幅を広げるさまざまな人の実践と思考から、AIとの新しい関係を探る本連載。今回登場するのは、連載「越境スピリット」にも登場したマレーシア在住ライターみずもとまいさん。家族でマレーシアへ移住し、現地から執筆とオンライン支援を続けるみずもとさんのAIとの向き合い方とは。(AI Base編集部)

マレーシア在住ライター みずもと まいさん

早稲田大学教育学部卒業後、電力会社・高速道路会社などで広報としてCSR報告書や環境広報に携わる。出産・子育てを機に心理学的アプローチで家庭の悩みと向き合い、2019年に子育て支援事業で独立。
2022年末に家族でマレーシアへ移住し、現在は現地から執筆・情報発信やオンラインでの子育て支援事業を行う。2人の子どもはインターナショナルスクールに在学中。

宿題でもAI活用が当たり前の時代。だからこそ親が担う役割が重要

マレーシアを拠点にライター業や子育て支援の事業を手掛けているみずもと まいさんに、AIの急速な進化をどこで実感しているかを尋ねると、子どもの教育現場での活用を例に挙げた。子どもが通うマレーシアのインターナショナルスクールでは、小学5年生から個人PCの持参が求められ、宿題でChatGPTを活用すること自体は日常になっているという。実際、最初の授業で出された「ポジティブ心理学とは何かを調べ、自分なりに考えて、プレゼンしなさい」という難しい課題に対し、親子でChatGPTを開き、「小学5年生でも分かるように簡単に説明して」と指示文(プロンプト)を入れるところから始めた。調べ方の入口が、図書館や検索からAIへ滑らかに置き換わっている。 


みずもとさんのお子さんが実際にChatGPTで調べものをする様子(写真提供=みずもとまい)

この状況は、日本で根強い「思考力が育たないのでは」「楽をしているだけでは」といったAIに対する懸念とも隣り合わせだ。みずもとさんも、その違和感を無視しない。ただ結論は明快だ。「ChatGPTはあくまで検索や意見出しの道具。かつて夏休みの自由研究で新聞をめくり、過去の天気を写したのと同じで、調べる手段がアップデートされただけだと思うんです。問題は“使うこと”ではなく、“使い方”にあると思います」(みずもとさん)

そこでみずもとさんが家庭で徹底しているのが「検証の作法」だ。AIは誤ることがある(ハルシネーションが起こる)と考えなさい。AIからアイデアをもらったら必ず検証し、言いなりになるのはやめよう」と子どもたちに教えているという。もっともらしい引用元を示しても、実際には元の文章に書かれていないこともある。だからこそ、親がリスクと限界を理解し、子どもに伝える必要があるという。

「切り捨ててしまうと、逆に子どもにとって不利益になる」。AIが学びのプロセスに組み込まれた今、禁止か容認かではなく、検証を前提にした“共存のルール”を家庭が設計する局面に入っている。

結論から逆引きし、問いの精度で成果を変える

みずもとさんにとってAIは、教育だけの話ではない。日々の仕事でも「欠かせない存在」になりつつある。子育て支援事業では、心理学的アプローチで悩みに向き合う仕事柄、論文やエビデンスに当たる機会が多い。従来の論文データベース検索は、探し方に習熟が必要で、欲しい一次情報に出会えるかどうかは時間と運の要素も大きかった。

そこでAIを「結論からの逆引き」に使う。「子どもにこういう接し方をすると、こういう結果になる——それを研究したエビデンスはないか。欲しい結論を起点に候補を出させ、そこから自分で一次情報を読み、確からしさを詰めていくんです」(みずもとさん)。AIに“答え”を委ねるのではなく、探索の初速を上げる使い方である。 

ライターとしてコンテンツをつくる際にも同じ思想が貫かれる。例えば星読み関連の企画では、ランキング形式の切り口や構成案をAIに出させ、最後は自分の知見で整える。「出してもらったものを、最後に自分で事実を検証して、自分なりの解釈を与えた上で完成形にする。そういう活用であれば、AIは一番の伴走者になってくれます」(みずもとさん)。AIを“下書き係”にする一方で、品質担保と意味付けは人間が担う、という役割分担が見える。 

では、AIをまだ使いこなせていない人は何から始めればよいのか。みずもとさんの助言は二つだ。「とにかく使ってみること」と「指示を具体的にすること」。ここで出てくる比喩が面白い。AIへの指示は子育てに似ているという。

「子どもに『ふわっ』と曖昧に伝えてしまうと、『ふわっ』とした反応になってしまいますよね。AIも同じだと思うんです。例えば『イギリスの植民地支配の歴史を教えて』とAIに聞いてしまうと輪郭が甘い。これを「〇〇年代、イギリス支配下に置かれていた▲▲の歴史を、植民地支配を受けた先住民の視点から書かれた英文文献で、引用元を明示して解説して」と条件を積むと、出力の精度がグッと変わります」(みずもとさん)

AIを完璧な回答マシンとして崇めるのではなく、前提条件の置き方を変えて反応を観察し、会話しながら“問いの精度”を上げていく。この試行錯誤そのものが、AIを自分の道具に変えるプロセスなのかもしれない。

AI活用のヒント】

・AIは間違える。もっともらしい情報ほど疑い、一次情報で検証する前提を持つ
・リサーチは「結論からの逆引き」が効く。候補をAIで絞り、最後は自分で読み切る
・成果を分けるのは「問いの具体性」。視点・条件・形式を細かく指定し、対話で精度を上げる