
AIの進化は、個人の働き方や事業の在り方を根本から揺さぶっている。では、個人起業家を支援するコンサルタントはこの変化をどのように捉えているのか。多様な立場の方々にAIについて聞いてみる連載「あの人にAIについて聞いてみた」。今回は、個人起業家向けコンサルティングで多くの実績を持つ株式会社THE HOLISTIC WORKS 代表取締役 中島萌未(ともみ)さんに話を聞いた。(AI Base編集部)

株式会社THE HOLISTIC WORKS 代表取締役/起業コンサルタント
中島 萌未さん
高校卒業後に単身渡英し、ホリスティック・セラピーを学ぶ。帰国後はアロマセラピストとして複数店舗で勤務し、その後料理研究家として独立。収入面での苦労を経てビジネスを体系的に学び、短期間で月商7桁を安定的に達成。2017年より起業コンサルタントとして事業を展開し、現在は個人起業家支援に加え、法人向けSNSプロデュースや自治体セミナーなど活動領域を広げている。
THE HOLISTIC WORKSで代表を務める起業コンサルタント中島 萌未さんは個人起業家やフリーランスの女性を対象に、それぞれの得意分野を生かした事業構築や集客支援を行っている。SNS運用やコンテンツ制作を含め、ビジネスの計画から売上づくりまで一貫した伴走支援を提供するのが主な業務だ。また、企業のSNSプロデュースとして運用代行や担当者育成も手がけており、幅広い顧客の課題に応えている。
こうした現場でAIの進化をどう見ているのか尋ねると、中島さんは「正直、仕事の面に関しては完全に脅威だと思っています」と率直に語る。これまで個人起業家が意識すべき競合は同業者だった。しかし「生成AIが普及したことで、今のライバルは『AIそのもの』になった」という。実際、著名なコンサルタントでさえ「集客が難しくなった」と口を揃える状況が生まれているという。ダイエットレシピの相談やSNS投稿の改善アイデアなど、これまで専門家が提供していた知識が、AIに質問すればすぐに得ることができるようになったためだ。
では、この脅威にどう向き合うべきか。中島さんは「ブランディングの強化」を第一に挙げる。「何を学びたいかではなく、『誰から学びたいか』を感じてもらわなければならないと思います」(中島さん)。人間らしさ、弱さも含めた個人の魅力を伝え、ファンをつくることがAIとの差別化につながるという。
もう一つの戦略が「手間のかかることをあえて丁寧に行う」姿勢だ。例えば「お客様へのお礼メールを一人ずつ手書きで送る」など、効率化と逆行する行動こそが、人間ならではの価値を生むと考えているという。AIでは代替できない、人間的な体温を伝える行動が、競争優位性の源泉になるという視点だ。
中島さん自身も、日々の業務や生活のなかでAIを積極的に活用している。頻度が高いのはマーケティング領域での活用だという。例えばクライアントのSNS戦略支援においては、目指すべきアカウントの「モデル選定」をAIに依頼し、ターゲット層に刺さる表現や投稿の傾向分析を行っている。例えば「直近50の投稿から話題にすべきこと1〜3位までを抽出」といった細かな分析もAIが担い、効率と精度を高めているという。
一方、私生活での活用例として教えてくれたのが「旅行プランの作成」だ。最近旅で訪問したソウルでは、到着時刻、行きたい美容クリニックの時間、食事の希望、購入したいコスメブランドなどを細かく伝え、「無駄のないスケジュールを作って」と依頼したところ、乗り換え案内まで含めた詳細なルートが提示されたという。ここで重要なのはAIに指示をするプロンプトの設計。単に「美味しい食事」と指示をするのではなく、「絶対にサムギョプサルは食べたい」「客単価は日本円で3000円程度が良い」など、しっかりと指示を出すことで、旅行プランの精度がグッと上がるという。
多忙な日々を送りながら、経営を改めて学びなおすため、大学にも通う中島さん。勉強においては、書籍のレコメンドにAIを活用している。中島さん自身の読書傾向や学習テーマを示すことで、関連書籍を効率的に知ることができ、知識の広がりにつながっているという。
一方で、中島さんはAI活用における「やってはいけないこと」も明確にしている。それは「文章をゼロから作ってもらうこと」だ。「AIが作った文章は、感情が動かず、その人らしさが伝わらない。対面での印象とのズレが必ず生じる」。そのため、AIはあくまでブラッシュアップや調査に使うべきであり、個人の想いや感情を届ける文章は自分で書くべきだと強調する。
最後に、まだAIを使いこなせていない読者に向けて、中島さんは「まずは趣味や興味のあるジャンルで楽しく使うこと」をすすめる。「おすすめの本や映画、旅行先など、自分の世界を広げる用途で気軽に触れることで、AI活用が身近になると思いますよ。まずは楽しく使ってみましょう!」(中島さん)
【AI活用のヒント】
・個人起業家にとってAIは脅威。差別化の鍵は、人間らしさを生かしたブランディング
・AIを最大限活用するには、目的・条件・文脈など丁寧に伝える「プロンプト設計」が不可欠
・AIをゼロからの文章生成に使うのは避けるべき。感情やその人ならではの表現は、自分で書くことで
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