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2025.08.08

“言葉・画像を数値化” AIが指示を理解する仕組み「エンベディング」を学ぶ

スマートフォンの音声検索、画像認識アプリ、あらゆる語句を理解するChatGPTなど、私たちの身の回りにあるAI技術。これらのAIがどうやって言葉や画像を理解しているのか、考えたことはありますか?

その基盤となる重要な技術が「エンベディング」です。エンベディングとは、言葉や画像などの情報を、AIが処理できる「数値のベクトル」に変換する技術のこと。人間が理解する「言葉」や「画像」を、コンピューターが理解できる「数値」に翻訳するための橋渡し役といえます。

本記事では、エンベディングの基本的な仕組みと活用例を分かりやすく解説します。

エンベディングとは? 

(引用:Medium

エンベディングとは、言葉や画像などの情報をAIが処理できる「数値のベクトル」に変換する技術です。この技術の特徴は、情報の「意味」や「関係性」を数値の組み合わせで表現できる点にあります。

例えば、「犬」と「猫」という2つの単語について考えてみましょう。人間は、どちらもペットとして人気の動物だと理解できますが、コンピューターはそうした意味を直接理解できません。

エンベディングでは、それぞれの単語を「座標」のような数値の組み合わせで表現します。例えば、「犬」が[0.7, 0.8, 0.2]、「猫」が[0.6, 0.8, 0.3]のように表すと、数値的に近い値となり、「意味が近い」ことを表現できるのです。一方で「自動車」のようなまったく異なる概念は、[0.1, 0.2, 0.9]のように数値の組み合わせが大きく異なります。

実際のエンベディングでは、数百次元もの数値を使うため、より複雑で豊かな関係性を捉えることができます。この「意味の近さ」を数値で表現できることが、AIが言葉を理解するための基盤となっているのです。

エンベディングの活用事例

エンベディングは、さまざまなAI機能の基盤として活用されています。

検索エンジン:意味を理解した検索

昔の検索エンジンは単純なキーワードマッチングでしたが、現代の検索エンジンは「意味」を理解します。例えば「自動車の価格」で検索すると、「車の値段」など、言葉は異なっていても意味的に近い情報も検索結果に表示されるようになりました。これは、エンベディングにより検索ワードと記事内容の「意味的な近さ」を計算できるようになったためです。

画像認識:視覚情報の数値化

画像認識でも、エンベディングは重要な役割を果たしています。写真をエンベディングに変換することで、似たような画像を見つけたり、「青い空と海の写真」などの特徴を持つ画像を検索したりできるようになります。

レコメンド機能:好みを数値で表現

ECサイトや動画配信サービスの「おすすめ」機能もエンベディングを活用しています。ユーザーの好みを数値ベクトルで表現し、それに近い商品や動画を提案するのです。

「言葉の意味を数値化」する仕組み

エンベディングは、テキストや画像などのデータを大量に学習して作られます。例えば、一般的な単語のエンベディング作成手法では、「テキストの中で一緒に出現する単語は、似た意味を持つだろう」という前提で学習します。

「猫」という単語の近くには「ペット」「動物」「かわいい」などの単語が出現しやすいことから、これらを数値的に近い位置に配置します。このようにして作られたエンベディングは、単語間の意味的な関係を数学的に表現できるようになるのです。

人間の言葉をAIに伝える変換技術

エンベディングは、人間が日常的に扱う情報(言葉、画像、音声など)を、AIが処理できる数値形式に変換する技術です。情報を単なるデータではなく「意味」を持った形で表現できるため、検索、分類、生成など、あらゆるAI技術の土台となっています。

私たちが当たり前のように使っているAIサービスの多くは、この「意味の数値化」があってこそ実現しているのです。エンベディングは、人間の理解とコンピューターの処理をつなぐ架け橋として、今後もAI技術の発展に欠かせない要素であり続けるでしょう。