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2025.07.15

ハルシネーションとは?AIが見せる幻覚・誤認の仕組みと影響を解説

ChatGPTに「日本で一番高い山は?」と質問すると、正確に「富士山」と答えます。しかし「富士山の初代山頂管理人の名前は?」と聞くと、実在しない人物の名前と経歴を自信満々に答えることがあります。このように、実際には存在しない情報を事実かのようにAIが作り出してしまう現象を「ハルシネーション(Hallucination:幻覚)」と呼びます。

近年急速に普及した生成AIですが、その弱点の一つがこのハルシネーションです。ビジネスでの活用が進む中、この現象を理解することは、AI活用の成否を分ける重要なポイントとなっています。本記事では、AIのハルシネーションの仕組みと影響について初心者にも分かりやすく解説します。

AIはなぜ「幻覚」を見るのか? 

「幻覚」という言葉は通常、実際には存在しないものを人間が知覚する状態を指します。そしてAIでも人間と似たような現象が起き、これをハルシネーションと呼びます。事実に基づかない情報を、AIが自信を持って提示してしまうのです。

言葉のパターンから「もっともらしさ」を学ぶAI

この現象が起きる主な理由は、大規模言語モデル(LLM)の学習方法にあります。LLMは膨大なテキストデータから「次の単語を予測する」という訓練を受けています。例えば「東京は日本の」というフレーズの次には、「首都」という単語が来る確率が高いと学習します。

しかし、AIは情報の真偽を検証する能力を本質的には持っていません。AIにとって重要なのは、文章の「もっともらしさ」なのです。「富士山の初代山頂管理人は〇〇さんで......」という文章パターンが言語的に自然であれば、実在しない人物でも答えてしまうのです。

学習データの限界

また、どれだけ大量のテキストを学習しても、世の中の全ての情報をカバーすることは不可能です。特に専門分野や最新情報になると、AIの知識にはどうしても穴が生じます。

質問に対して「分かりません」と答えるよりも、学習したパターンから「もっともらしい回答」を生成するように設計されているため、情報が不足している場合においてもAIは「創作」をしてしまうのです。

ハルシネーションの種類

AIのハルシネーションには、いくつかのパターンがあります。

事実の捏造

存在しない事実を作り出すケースです。「2000年のノーベル平和賞受賞者は誰ですか?」という問いに対して、実際の受賞者(金大中元韓国大統領)ではなく、架空の人物や別の受賞者を答えてしまうことがあります。

過度な一般化

少ない情報から過度に一般化するケースです。「コーヒーに含まれるカフェインは健康に良い効果がある」という部分的に正しい情報から、「コーヒーは万人にとって健康によい飲み物である」という誤った結論を導き出してしまうことがあります。

ビジネスにおけるハルシネーション対策

ビジネスでAIを活用する際、ハルシネーションは大きなリスクとなり得ます。誤った情報に基づく意思決定や、顧客への不正確な回答は、信頼を損なう可能性があります。

対策としては、以下の方法が効果的です。

●AIの回答を鵜呑みにせず、重要な情報は必ず人間が確認する。

AIに回答を生成させる際、信頼できる情報源からの引用を含めるように指示する。

RAG(検索拡張生成)技術を搭載したAIツールを選択し、より正確な情報を得られるようにする。

RAG(検索拡張生成)とは、AIが回答を生成する前に、質問に関連する信頼できる情報を外部データベースから検索して参照する技術です。RAGを活用することで、AIのハルシネーションを大幅に減らすことができます。

AIの「創作力」を理解して上手に付き合う

ハルシネーションはAIの弱点であると同時に、その創造力の源泉でもあります。AIが見せる「幻覚」は、学習したパターンから新しい組み合わせを生み出す能力の副産物とも言えるでしょう。

私たちにとって重要なのは、完璧なAIを求めることではなく、その特性を理解した上で適切に活用することです。特に、重要な意思決定や専門的な情報が必要な場面では、AIを盲目的に信頼するのではなく「人間の思考の補助ツール」として位置づけることで、その真価をより発揮させることができるでしょう。