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2025.06.20

特許文書のチェックをAIで効率化!請求項の書き方を改善する方法

<こんなお困りごとをAIが解決!>

●特許請求項の作成に時間がかかりすぎている
請求項の文章が曖昧になりがち
権利範囲の広さと明確性のバランスが取れない
査定率の低さに悩んでいる
出願前の社内チェックに工数がかかりすぎている

特許請求項の作成・チェック作業は、多くの企業の知財部門や特許事務所が頭を悩ませている業務です。

「範囲が狭すぎて十分な権利が取れない」「曖昧な表現で拒絶理由が出る」「複雑すぎて理解しづらい」など、特許文書作成には多くの課題があります。

本記事では、ChatGPTやClaudeといったAIを活用して、特許請求項の作成・チェック作業を効率化し、査定率を高める具体的な方法をご紹介します。

特許文書の「落とし穴」を理解する

まずは、特許請求項が抱える典型的な問題点を見てみましょう。

1.曖昧な表現による権利範囲の不明確さ:「必要に応じて」「所定の」といった表現は解釈の幅が広く、権利範囲が不明確になります。

2.冗長な文章構造:一文が長すぎて理解しづらく、審査官や第三者が内容を正確に把握できない場合があります。

3.技術的特徴の抽象度の不適切さ:抽象的すぎると先行技術に含まれやすく、具体的すぎると回避設計されやすいというジレンマがあります。

4.用語の不統一:同じ部品や工程を指すのに異なる用語を使うと、権利範囲の解釈に混乱をきたします。

これらの問題は、以下のような具体的な不利益を引き起こします。

●拒絶理由通知の増加(審査期間の長期化)

権利範囲の予想外の解釈(権利行使の難しさ)

無効審判のリスク増大(権利の不安定化)

社内レビュー工数の増加(コスト増)

これらの課題に対して、AIを活用した具体的な解決アプローチを見ていきましょう。

ChatGPTによる解決アプローチ

特許請求項の作成・チェックにおける悩みを解決するために、ここからはChatGPTを活用して、作業を効率化するテクニックをご紹介します。

Step 1:請求項のチェックリスト作成

特許請求項のチェックを効率化する上で最も重要なのは、「何をチェックするか」を明確にすることです。チェックリストを先に用意しておくことで、以下のような大きなメリットが生まれます。

●チェック漏れの防止

●チェック基準の標準化

●社内での知見の共有

●効率的な改善点の特定

では、実際のチェックリスト作成を始めていきましょう。以下のようなプロンプトをChatGPTに打ち込みます。

<プロンプト>

特許請求項をチェックするための詳細なチェックリストを作成してください。

以下の観点を含めてください:

・権利範囲の明確性

・サポート要件の充足

・先行技術との差別化

・記載不備のチェック

・用語の統一性

・文章構造の適切さ

各項目について、具体的な確認ポイントと、問題がある場合の改善アプローチも提案してください。

実際に、ChatGPTが出力した結果の一例が以下です。

Step 2:AIを使った請求項の具体的なチェック

次に、Step1で作成したチェックリストを活用して、実際の特許請求項をAIでチェックしてみましょう。以下のようなプロンプトで、ChatGPTに特許請求項の分析を依頼します。

<プロンプト>

以下の特許請求項を、先ほど作成したチェックリストに基づいて詳細に分析してください:

【請求項1】

撮像素子と、
前記撮像素子の出力信号に基づいて被写体を検出する被写体検出手段と、
所定の条件に基づいて、検出された被写体にフォーカスを合わせるオートフォーカス手段と、
ユーザによる操作を受け付ける操作受付手段と、

前記操作受付手段により受け付けられたユーザ操作に基づいて、前記オートフォーカス手段による動作を制御する制御手段と、

を備えることを特徴とするカメラ装置。

ChatGPTの出力結果は以下の通りです。

<出力結果の一部>

Step 3:特許明細書全体との整合性チェック

請求項だけでなく、明細書全体との整合性も重要です。AIを活用して、請求項と明細書の整合性を効率的にチェックしましょう。

<プロンプト>

以下の特許請求項と明細書の抜粋部分の整合性をチェックし、不一致や改善すべき点を指摘してください。

【請求項1】

撮像素子と、
前記撮像素子の出力信号に基づいて被写体を検出する被写体検出手段と、
所定の条件に基づいて、検出された被写体にフォーカスを合わせるオートフォーカス手段と、
ユーザによる操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段により受け付けられたユーザ操作に基づいて、前記オートフォーカス手段による動作を制御する制御手段と、

を備えることを特徴とするカメラ装置。

【明細書抜粋】

本発明のカメラ装置は、CCD等 の撮像素子101からの画像データに基づいて画像処理部102が顔認識処理を行い、被写体の顔を自動検出する。被写体検出後、コントラスト検出方式のオートフォーカス機構103が作動し、被写体に焦点を合わせる。

ユーザはタッチパネル104を介して任意の位置をタップすることで、オートフォーカスのターゲットポイントを指定できる。制御部105は、タッチパネル104からの入力に基づき、顔認識による自動検出よりもユーザ指定のポイントを優先してフォーカスを合わせるよう、オートフォーカス機構103の動作を制御する。

<出力結果>

Step 4:先行技術調査と差別化ポイントの強化

ステップ1〜3のチェックと改善を踏まえた上で、最後に特許請求項の差別化ポイントを強化していきます。先行技術との差別化は特許取得の成否を左右する重要な要素です。AIを活用して先行技術との差別化ポイントを明確にし、特許請求項を強化しましょう。

<プロンプト>

以下の特許請求項について、想定される先行技術と差別化すべきポイントを分析してください。ステップ1〜3の分析結果も踏まえて、差別化ポイントを強調した改善案を提案してください。

【請求項1】

撮像素子と、
前記撮像素子の出力信号に基づいて被写体を検出する被写体検出手段と、
所定の条件に基づいて、検出された被写体にフォーカスを合わせるオートフォーカス手段と、
ユーザによる操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段により受け付けられたユーザ操作に基づいて、前記オートフォーカス手段による動作を制御する制御手段と、

を備えることを特徴とするカメラ装置。

これまでの分析結果:

1. 「所定の条件」「被写体検出手段」「ユーザによる操作」などの表現が曖昧で権利範囲が不明確

2. 用語が「被写体検出手段」と「画像処理部」、「オートフォーカス手段」と「オートフォーカス機構」のように明細書と請求項で不一致

3. 制御内容の具体的な記載が不足しており、差別化ポイントが不明確

技術分野:デジタルカメラのオートフォーカス制御

想定される新規性:ユーザ操作と自動検出の組み合わせによる柔軟なフォーカス制御

<出力結果>

AIを活用した特許請求項改善のポイント

ChatGPTやClaudeなどのAIを活用した特許請求項の改善は、以下の4ステップで実現できます。

1.チェックリストの作成

2.請求項の具体的なチェック

3.明細書全体との整合性チェック

4.先行技術調査と差別化ポイントの強化

重要なのは、AIの出力結果を参考にしながら、特許の専門知識を持つ人間が最終判断を行うことです。AIは多くの観点から効率的なチェックや改善案を提案してくれますが、最終的な特許戦略は人間が決定すべきものです。

このアプローチにより、従来は数時間かかっていた特許請求項のチェック・改善作業を、質を落とすことなく大幅に効率化することが可能です。特に、複数の特許案件を同時に扱う企業の知財部門や特許事務所では、AIを活用することで作業時間の短縮と品質向上の両立が期待できます。ぜひ、本記事で紹介した手順を参考に、自社の特許文書作成プロセスにAIを導入してみてください。