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2025.06.02

「アンサンブル学習」を知る―複数のAIを組み合わせて精度を高める

AIの世界では、「三人寄れば文殊の知恵」という言葉が当てはまる技術があります。一つの優れたAIモデルよりも、複数の異なるAIモデルを組み合わせることで、より正確な予測や判断ができるようになるのです。

この「複数のAIを束ねて使う」という手法が「アンサンブル学習」です。スマートフォンの音声認識から医療診断、金融リスク評価まで、高い精度が求められるさまざまな分野で活用されています。本記事では、アンサンブル学習の基本的な考え方と仕組みを分かりやすく解説します。

アンサンブル学習の基本原理

アンサンブル学習とは、複数の機械学習モデル(学習済みのAI)の予測結果を組み合わせて、より正確な最終結果を得る手法です。これは、難しい問題を複数の専門家に相談し、それぞれの意見を総合して最終判断を下すのに似ています。

例えば、あるX線画像が「がん」かどうかを判断する場合、一人の医師の診断よりも、複数の医師による診断を総合した方が誤診のリスクが低くなります。アンサンブル学習もこれと同じで、「多数決」や「平均値」などの方法で複数のモデルの意見を集約し、単独のモデルよりも精度の高い予測を実現します。

3つの代表的なアンサンブル手法 

アンサンブル学習には、いくつかの主要な手法があります。それぞれ異なるアプローチで複数のモデルを組み合わせて、精度を向上させます。

バギング:多様な視点でより確かな判断を

バギング(Bagging)は、同じアルゴリズムを使った複数のモデルに、少しずつ異なるデータを学習させる方法です。これは、同じ問題について複数の人にそれぞれ違う参考資料を読んでもらい、意見を集約するようなものです。

代表的な例が「ランダムフォレスト」で、多数の決定木(単純な判断モデル)を異なるデータで訓練し、その予測を多数決で決めます。これにより、個々の決定木が持つ偏りや弱点を相互に補い合い、高い精度を実現します。

ブースティング:弱点を補い合って強くなる

ブースティング(Boosting)は、前のモデルが苦手とした問題を次のモデルが重点的に学習していく方法です。これは、苦手科目を得意な友達に教えてもらいながら勉強を進めるイメージです。

例えば「AdaBoost」や「XGBoost」などのアルゴリズムでは、最初のモデルが間違えた例に重点を置いて次のモデルを訓練します。こうして「性能の低いモデル」を順番に組み合わせることで、全体として「高精度なモデル」を作り上げるのです。

スタッキング:専門家の意見を総合する調整役

スタッキング(Stacking)は、複数のモデルの予測結果をさらに別のモデルに入力し、最終判断を行う方法です。これは、複数の専門家の意見を聞いた上で、最終判断を下す「調整役」がいるようなものです。

例えば、画像認識、テキスト分析、数値データ分析といった異なる専門モデルの結果を総合して、最終的な判断を行う「メタモデル」を訓練します。メタモデルとは、他のモデルの予測結果を入力として受け取り、それらを最適に組み合わせる方法を学習する上位モデルのことです。これにより、それぞれのモデルの強みを活かしながら、より正確な予測が可能になります。

複数の予測を組み合わせるAIの精度向上技術

アンサンブル学習の本質は、「複数のモデルの予測を組み合わせることで、より正確な判断ができる」という点にあります。単独のモデルでは見落としがちなパターンや関係性も、複数のモデルを組み合わせることで捉えられるようになります。

現代のAIシステムでは、この複数の予測を統合する原理を活用することで、自動運転車の物体認識から医療診断、金融リスク評価まで、高い信頼性が求められるさまざまな分野で精度向上を実現しています。単一モデルの限界を超え、より高い精度と信頼性を獲得できる点が、アンサンブル学習の最大の価値と言えるでしょう。