●クレーム対応後の報告書作成に時間がかかりすぎて他の業務に支障が出ている
●報告書の書式が統一されておらず、情報の抜け漏れが発生している
●同じような内容を何度も書く作業に疲弊している
●「この表現は適切か」と言葉選びに迷って時間を浪費している
毎回のクレーム対応後、多くの担当者が頭を悩ませているのが報告書の作成です。「対応はスムーズにできたのに、報告書作成に余計な時間を取られる」「重要な情報をどう書けばいいか迷ってしまう」といった課題を抱えながらも、時間に追われて「とりあえず提出」することになってはいませんか?
本記事では、ChatGPTを活用して、クレーム対応の報告書の質を向上させながら作成時間を大幅に削減する具体的な方法をご紹介します。
まずは、典型的なクレーム報告書作成の流れと課題を見てみましょう。
1.対応内容の振り返り(10分):メモや記憶を頼りに何があったかを整理
2.報告書の下書き作成(20分):フォーマットに沿って情報を埋めていく
3.表現の推敲と確認(15分):適切な言葉遣いになっているか見直し
4.上長確認・修正(15分):指摘を受けて修正する
1件の報告書作成に1時間以上かかっているケースも少なくありません。特に、以下のような状況ではさらに時間と労力を要します。
●クレーム内容が複雑で多岐にわたる
●初めて対応するような種類のクレーム
●会社の責任が問われる可能性がある内容
●複数部署での情報共有が必要な案件
このように、クレーム報告書の作成は想像以上に多くの時間と精神的負担を伴う業務なのです。
そんな時間のかかるクレーム報告書作成の悩みを解決するために、ここからはChatGPTを活用して、報告書作成を効率化する具体的なテクニックをご紹介します。
クレーム報告書の効率的な作成のために最も重要なのは、「型」を決めておくことです。テンプレートを先に用意しておくことで、以下のような大きなメリットが生まれます。
●報告書作成時の思考時間を大幅に削減
●必要情報の漏れをなくし、品質の一貫性を保証
●チーム内での共有・引き継ぎが容易に
●上長や経営層への報告がスムーズに
特に多様なクレームに対応する部門では、クレームの種類ごとに最適な報告フォーマットを最初に整理しておくことで、日々の報告書作成がスムーズになります。
では、実際のテンプレート作成を始めていきましょう。以下のようなプロンプトをChatGPTに打ち込みます。
<プロンプト>
以下の条件でクレーム対応報告書のテンプレートを作成してください。
業種:ECサイト運営
クレーム種類:商品配送遅延
含めるべき情報:
・顧客情報(個人情報は伏せる形で)
・受付日時と対応完了日時
・クレーム内容の要約
・原因分析
・対応内容の詳細
・再発防止策
・顧客の最終的な反応
重視する点:
・事実関係を簡潔に記載
・感情的な表現を避ける
・具体的な時系列で記載
・専門用語は必要最小限に
実際にChatGPTが出力した結果の一例が以下です。
<出力結果>
正確な時系列や具体的な原因分析を示すことで、対応の透明性と再発防止の実効性が高まります。
次に、Step1で作成した基本テンプレートをベースに、よくあるクレーム種類別のテンプレートバリエーションを作成しましょう。クレーム対応において、種類別のテンプレートを用意することは以下の理由から非常に重要です。
●各クレーム特有の情報収集項目が明確になる
●原因分析の視点が絞られ、再発防止策の質が向上する
●対応の標準化により、担当者間での品質差を減らせる
●報告書作成時間の大幅短縮につながる
それでは、いくつかの代表的なクレーム種類別のテンプレートを作成してみましょう。
<プロンプト>
先ほどの基本テンプレートをベースに、以下の3種類のクレームに特化したテンプレートのポイントを簡潔に説明してください。それぞれのクレーム種類で特に重視すべき情報収集項目と原因分析の観点を中心に説明してください。
1. 商品品質クレーム
2. 接客態度クレーム
3. 返品・返金クレーム
<出力結果>
クレームの種類に特化した情報収集項目と、原因分析の観点を明確に区分けすることで、対応の質と効率が飛躍的に向上します。
Step1、2までの作業で、クレーム種類別の報告書テンプレートが作成できました。次は、これらを実際のクレーム対応後にどのように活用するかを見ていきましょう。
以下のようなプロンプトを利用することで、実際のクレーム報告書作成を効率化できます。
<プロンプト>
以下の情報を元に、ECサイトの商品品質クレームに関する報告書を作成してください。
【基本情報】
- 受付日時:2025年3月15日 14:30
- 対応完了日時:2025年3月18日 11:15
- 顧客ID:C2305789
【状況詳細】
顧客は3月10日に購入したワイヤレスイヤホン(商品番号:WE-2025B)について、「右側から音が出ない」と連絡してきました。購入から5日後に初めて使用したところ不具合に気づいたとのこと。
【対応内容】
1. 3/15 14:30 - クレーム受付、初期調査
2. 3/15 15:45 - 顧客に電話し、リセット操作を案内するも改善せず
3. 3/16 10:00 - メーカーに同様の不具合報告がないか確認
4. 3/16 14:30 - メーカーから「製造ロットA2302に同様の不具合報告あり」との回答
5. 3/17 09:30 - 顧客に交換対応を提案、了承を得る
6. 3/17 11:00 - 新商品発送手配
7. 3/18 10:30 - 顧客に商品到着確認、動作確認
8. 3/18 11:15 - 不具合品の返送案内と謝罪
【原因】
メーカー確認により、製造ロットA2302の一部に右側スピーカーの接続不良があることが判明。
【顧客の反応】
迅速な対応に感謝の言葉あり。他の商品も検討したいとの発言もあった。
<出力結果>
製品の詳細情報と技術的な原因分析を丁寧に記載し、具体的なアクションプランを示すことで、顧客満足度の回復と品質管理体制の強化につながります。
より質の高いクレーム報告書を効率的に作成するには、AIへの指示文であるプロンプトの設計が重要です。以下に、効果的なプロンプト設計のポイントをご紹介します。
クレーム情報を「基本情報」「状況詳細」「対応内容」「原因」「顧客の反応」などの項目に分けて構造化することで、AIはより適切な形式で報告書を作成できます。
プロンプト内で「確認済み事実」と「推測・仮説」を明確に区別して伝えることで、報告書内での表現が適切になります。
<適切な表現例>
【確認済み事実】
- 商品の右側から音が出ない状態を確認
- 製造ロットA2302の不具合発生率は約2%(メーカー報告)
【推測・仮説】
- 製造工程での半田付け不良の可能性がある
- 同ロットの他商品にも潜在的不具合の可能性
対応内容の時系列を明確に示すことで、状況の流れが分かりやすい報告書になります。
「事実ベースで冷静な表現」「お詫びを含めた丁寧な表現」など、報告書に求められるトーンをプロンプトで指定しましょう。
ChatGPTから出力された報告書は、以下のポイントで最終確認を行いましょう。
●日付や数値に誤りがないか
●対応内容が実際の流れと合っているか
●顧客の反応が正確に記載されているか
●感情的な表現や断定的すぎる表現がないか
●責任の所在が適切に記載されているか
●専門用語の使用が適切か
●不必要な個人情報が含まれていないか
●顧客の言動が適切に匿名化されているか
●具体的かつ実行可能な内容になっているか
●担当部署と期限が明確か
●コスト面も考慮された現実的な対策か
●文書全体で矛盾する記述がないか
●流れが論理的で理解しやすいか
AIを活用したクレーム報告書作成の効率化は、以下の5ステップで実現できます。
1.報告書テンプレートの作成
2.クレーム種類別のテンプレートバリエーション作成
3.テンプレートを活用した下書きの作成
4.精度向上のためのプロンプト設計
5.人の手による最終チェック
重要なのは、自社のクレーム対応フローや報告基準を踏まえたプロンプト設計です。まずは簡単なクレームケースから始めて、実際の結果を見ながらプロンプトや確認プロセスを調整していくことをお勧めします。
このアプローチにより、従来は1件あたり1時間以上かかっていた報告書作成を、質を落とすことなく10分程度まで短縮することが可能です。ぜひ、本記事で紹介した手順を参考に、自社に最適なクレーム報告書作成プロセスを構築してみてください。