●請求書の不備を見つけるのに時間がかかりすぎる
●人手による確認ではミスが発生しやすい
●間違った請求書の処理でトラブルや支払い遅延が発生している
●経理担当者の業務負担が大きく、他の重要業務に時間を割けない
多くの企業では日々大量の請求書処理に追われ、その確認作業に膨大な時間を費やしています。
「金額の入力ミスを見逃してしまった」「税率の適用が間違っていた」といった課題を抱えながらも、人手不足から十分なチェック体制を構築できていない企業も少なくありません。
本記事では、ChatGPTなどのAIを活用して、請求書の不備を自動的に検出し、処理業務を効率化する具体的な方法をご紹介します。
まずは、請求書の確認プロセスにおける典型的な問題点を見てみましょう。
1.確認漏れの発生:大量の請求書を処理する中で、重要な項目の確認が抜け落ちることがあります。
2.一貫性の欠如:担当者によってチェックの厳密さや注目点が異なり、品質にばらつきが生じます。
3.知識の偏り:税制や規定の変更に対する理解度が担当者によって異なるため、最新の基準に沿った確認ができないことがあります。
4.時間の制約:月末や期末など、処理件数が増加する時期には十分な確認時間を確保できないことがあります。
これらの問題点は、以下のような具体的なリスクを引き起こします。
●不正確な支払い(過払いや過少払い)の発生
●取引先とのトラブルや関係悪化
●監査時の指摘事項の増加
●処理の遅延による支払いサイクルの長期化
●経理担当者の過重労働やストレス増加
このような請求書確認の課題を解決するために、ここからはAIを活用した自動チェックの具体的な方法をご紹介します。
請求書のチェックを効率化する上で最も重要なのは、確認すべき項目を明確にすることです。チェック項目を明確化することで、以下のようなメリットが生まれます。
●AIへの指示が明確になり、精度の高い確認が可能に
●担当者間での確認基準の統一
●新しい担当者への引き継ぎがスムーズに
●問題発生時の原因特定が容易に
一般的な請求書において、確認すべき項目には以下のようなものがあります。
1. 基本情報
●請求書番号(重複していないか)
●発行日・支払期限(妥当な日付か)
●取引先情報(登録情報と一致しているか)
2. 金額関連
●単価と数量の計算が正確か
●小計・税額・合計金額の計算が正確か
●契約条件や見積りと金額が一致しているか
3. 税務関連
●適切な税率が適用されているか
●非課税項目の取り扱いは正しいか
●源泉徴収税の計算は正確か
4. その他
●支払条件は契約に沿っているか
●必要な添付書類は揃っているか
●承認印や署名は必要に応じて付いているか
それでは、実際にChatGPTに指示するためのプロンプト例を見てみましょう。
<プロンプト>
以下の請求書情報をチェックし、不備や計算ミスがないか確認してください。
【請求書基本情報】
請求書番号:INV-2025-0421
発行日:2025年4月10日
支払期限:2025年5月10日
発行元:株式会社テクノプレイシア
宛先:雪花商事株式会社
【明細】
1. システム開発費 800,000円 × 1式 = 800,000円
2. サーバー設定費 50,000円 × 3台 = 150,000円
3. 保守サポート(年間) 240,000円 × 1式 = 240,000円
小計:1,190,000円
消費税(10%):119,000円
合計:1,309,000円
【確認事項】
1. 計算の正確性(単価×数量、税額計算など)
2. 日付の妥当性
3. 契約条件との整合性(契約では保守サポート年間200,000円)
4. その他気になる点
次に、Step 1で作成したプロンプトをChatGPTに入力して、実際に請求書のチェックを行ってみましょう。ChatGPTは、記載された情報を基に以下のような確認を行います。
1.数値計算の検証
2.論理的整合性のチェック
3.記載内容の比較検証
以下は、実際の出力例です。
<出力結果>
請求書のデータが紙や画像、PDFの形式で届く場合も多いです。そのような場合には、OCR(光学文字認識)技術を組み合わせることで、より効率的な処理が可能になります。
具体的な手順は以下の通りです。
1.OCRツールでスキャンした請求書から文字情報を抽出
2.抽出したテキストデータをChatGPTに入力
3.ChatGPTが内容を解析して不備をチェック
この手法の導入には以下のようなメリットがあります。
●紙やPDF形式の請求書もデジタル処理が可能に
●手入力の手間とミスを削減
●大量の請求書を短時間で処理可能
ただし、OCR処理の精度によって結果が左右されるため、特に重要な請求書については人間による最終確認を行うことが望ましいでしょう。
AIによるチェックの結果を受け取ったら、検出された不備を体系的に整理し、今後の対策に活用しましょう。
まずは検出された不備を「単純な計算ミス」「契約条件との不一致」「フォーマット上の問題」「疑わしい取引や不自然な金額」などのカテゴリーに分類します。これにより問題の全体像を把握し、適切な対応戦略を立てることができます。
次に、対応の優先順位を決定します。一般的には金額の大きい不備から着手し、支払期限が迫っているものや重要取引先の案件を優先するとよいでしょう。
優先順位が決まったら、取引先とのコミュニケーションに移ります。検出された不備について丁寧に問い合わせ、必要に応じて請求書の再発行を依頼します。この際、単に問題を指摘するだけでなく、今後の対策についても協議することで再発防止につなげられます。
最後に社内プロセスの改善を検討します。頻発する不備のパターンを分析し、取引先への事前ガイダンスを提供したり、社内承認フローを見直したりすることで、根本的な問題解決を図ります。
また、AIによる自動チェックシステム自体の精度向上も重要です。AIが見逃した不備を記録し、検出精度が低い項目を特定することで、プロンプトや確認項目を継続的に改善できます。定期的な精度検証を実施し、システムの信頼性を高めていくことで、より効果的な請求書チェック体制を構築できるでしょう。
AIを活用した請求書の自動チェックは、以下の3ステップで実現できます。
1.チェック項目の明確化
2.AIによるチェックの実行
3.チェック結果の活用
重要なのは、AIを単なる確認ツールとしてではなく、業務プロセス全体を見直すきっかけとして活用することです。請求書処理の上流(契約管理や発注プロセス)から下流(支払い処理や記帳)まで、一貫したデジタル化を進めることで、より大きな効果が得られるでしょう。まずは小規模な範囲から試験的に導入し、効果を検証しながら徐々に適用範囲を広げていくことをお勧めします。