●技術文書の校正に膨大な時間がかかる
●社内で専門用語の表記揺れが発生し、読み手を混乱させる
●複数人で作成した文書の用語統一に手間取っている
●マニュアルや仕様書の品質にばらつきがあり、プロジェクトに影響が出ている
技術文書の作成と校正は、多くの企業が抱える時間のかかる作業です。特に、複数の部署や担当者が関わる大規模プロジェクトでは、専門用語の表記揺れや用語の不統一が発生しがちです。
「A部署では『データベース』、B部署では『DB』と書いている」「前半は『ユーザー』なのに後半は『ユーザ』になっている」などの不統一は、読み手を混乱させるだけでなく、企業のプロフェッショナリズムにも関わる問題です。
本記事では、ChatGPTを活用して技術文書の校正作業を効率化し、特に専門用語の一貫性を確保する具体的な方法をご紹介します。
まずは、技術文書における一貫性の欠如がどのような問題を引き起こすのか見てみましょう。
4.ブランドイメージの低下:表記の不統一は「注意不足」という印象を与え、ドキュメント全体の信頼性を下げます。
こうした一貫性の欠如は、以下のような具体的な問題を引き起こします。
●プロジェクトの遅延(誤解に基づく手戻りが発生する)
●サポートコストの増加(ユーザーからの問い合わせが増える)
●法的リスクの増大(契約書や規約の解釈に齟齬が生じる)
●社内研修の非効率化(新入社員が混乱し、業務習得に時間がかかる)
このような技術文書の校正における課題を解決するために、ここからはChatGPTを活用して、専門用語の一貫性チェックを効率化する具体的なテクニックをご紹介します。
技術文書の一貫性を確保する上で最も重要なのは、社内で標準となる「用語集」を整備することです。ChatGPTを使えば、既存ドキュメントから用語を抽出し、整理する作業を効率化できます。用語集を整備しておくことで、以下のような大きなメリットが生まれます。
●文書作成時に参照できるスタンダードができる
●新入社員の教育コストが下がる
●翻訳や多言語展開が容易になる
●将来的なドキュメント管理システムの基盤になる
では、実際に既存ドキュメントから用語を抽出するプロセスを始めましょう。以下のようなプロンプトをChatGPTに打ち込みます。
<プロンプト>
以下の技術文書から専門用語を抽出し、表形式でリスト化してください。各用語について、「推奨表記」「不適切な表記のバリエーション」「説明」の列を設けてください。
[ここに既存の技術文書をコピー&ペースト]
実際に、ChatGPTが出力した結果の一例が以下です。
<出力結果>
次に、文書校正のためのルールを設定します。校正ルールを明確化すると、以下のようなメリットがあります。
●一貫性のあるチェックが可能になる
●チェック漏れが減少する
●担当者による品質のばらつきを抑制できる
●チェック作業の属人化を防止できる
以下は、具体的な校正ルールの一例です。Step3では、以下のプロンプトを用いてChatGPTに指示をすることになります。
<プロンプト>
以下の校正ルールに基づいて、添付した技術文書をチェックしてください。問題点を見つけたら、具体的な修正提案と合わせて指摘してください。
【校正ルール】
1.用語集に登録された推奨表記を使用していること
2.略語を使用する場合は、初出時にフルスペルを記載すること
3.英語と日本語の間には半角スペースを入れること
4.箇条書きの文末は統一されていること(「です・ます」または「である」のどちらかで統一)
5.図表番号が連番になっていること
[ここに校正対象の技術文書をコピー&ペースト]
Step1、Step2の準備が整ったら、AIによる本格的な校正作業を実施します。大量のドキュメントを効率的にチェックするため、以下のようなプロンプトが有効です。
<プロンプト>
以下の技術文書について、添付した用語集と校正ルールに基づいて一貫性をチェックしてください。特に以下の点に注意してください。
1. 専門用語の表記揺れ
2. 章や節をまたいだ用語の不統一
3. 図表のキャプションにおける用語の使用
チェック結果は「場所」「問題点」「修正案」の表形式で出力してください。
【用語集】
[Step1で作成した用語集をコピー&ペースト]
【校正ルール】
[Step2で設定した校正ルールをコピー&ペースト]
【チェック対象文書】
[ここに校正対象の技術文書をコピー&ペースト]
このプロンプトによる出力結果は、具体的な修正箇所をリスト化したものになります。
<出力結果>
ChatGPTのチェック結果を得たら、以下のステップで最終的な品質を確保していきましょう。
●AIが捉えきれない業界特有のニュアンスを確認
●例外的に標準と異なる表記が必要な箇所の判断
●用語の使い分けが意図的なケースの検証
●チェック過程で発見された新規用語の追加
●曖昧だったルールの明確化
●部署間で解釈の異なる用語の統一基準を設定
●今回の校正プロセスを社内ワークフローに組み込む
●文書作成時に参照できるスタイルガイドとして整備
●新入社員研修への組み込み
このように、AIによるチェックは「完全自動化」ではなく、人間の専門知識と組み合わせることで最大の効果を発揮します。
ChatGPTを活用した技術文書の校正プロセスは、以下の3ステップで効率化できます。
1.用語集の作成と整理
2.校正ルールの設定
3.AIによる一括チェック(および人による最終確認)
重要なのは、自社の業務知識や専門用語の特性を踏まえた適切なプロンプト設計です。まずは小規模な文書からスタートし、用語集やルールを徐々に充実させていくことをお勧めします。
このアプローチにより、従来であれば数日かかっていた技術文書の校正作業を、質を落とすことなく数時間に短縮することが可能です。ぜひ、本記事で紹介した手順を参考に、自社に最適な技術文書校正プロセスを構築してみてください。